「成績が良かったのになぜこんなことに…」突然“通信制に行く”と言い出した息子。受け入れられない母親が見落としている“根本的な問題”
意志を認めた上で、具体策を話し合おう
【ひとし】 なるほどね。とはいえ、実際にこの親御さんの気持ちになって考えたら、息子さんの選択を受け入れるのは心配だし、難しいって思うかも……。 【はるか】 そうだね。僕も「子どもの言うことはすべて肯定してほしい」と思ってるわけじゃありません。むしろそれはちょっと存在価値側に寄りすぎた考え方かもしれない、と思います。 たとえば、会社での人間関係で考えてみましょう。お互いが機能価値を軸につながり合って「この人は何ができるか」「何をしてきたか」だけで判断すると、きっと社内の人間関係は希薄になるし、殺伐とした雰囲気になりますよね。それじゃあ気持ち良く働けないし、うまく会社は回らないと思います。 一方で、お互いが存在価値を軸に「いてくれるだけでいい」「何をしたってあなたの価値は変わらないよ」とつながり合っていたら、ただの仲良し集団で終わってしまって、売り上げや成績を気にしなくなるかもしれない。それでは成長がなくなるし、ビジネスとしてうまくいくはずがありません。 つまり、機能価値でも存在価値でも、どちらかに大きく偏ると、どこか破綻してしまうんじゃないかなと思うんです。同僚や部下の存在価値を認めて、お互いを尊重し合うのはもちろん大事だし、それと同時に実績や結果について機能価値で冷静に判断すべきときもある。両方のバランスが大事だと思うんですよね。 【ひとし】 なるほど。 【はるか】 お子さんが社会に出ていくための進路決定も同じで。機能価値のほうにだけ目を向けて「こうしたほうがいい」「将来のためにこうすべき」って言葉が増えてしまうと、息子さんの心が離れてしまったり、ますます勉強へのやる気を失ってしまったりするかもしれない。一方で、存在価値だけに目を向けて全肯定していたら、将来的に後悔する選択になるかもしれない。やっぱり子どもはまだまだ知らないこともあるし、このお母さんがおっしゃるように「考えが甘い」ということもあると思うので。 だからまずは、自分で意思決定しようとする姿勢を肯定したり、存在価値を認める声かけをしていく。すると、いろんな選択肢を調べたりするモチベーションも生まれると思うんです。そして次に、お子さんの意志について、「その選択に根拠があるのか」「目標のために妥当な選択なのか」といった点をしっかり話し合っていくといいんじゃないでしょうか。それが、お互いに後悔のない進路選択につながっていくのかなと思います。 【ひとし】 なるほどね、機能価値も存在価値もどちらも大事、と。だけど、今回のお悩みの場合では、まずは存在価値を認める声かけから考えるといいってことだね。 【はるか】 そうそう。まずは「あなたがいてくれるだけでうれしいんだよ」っていう親御さんの愛情が、しっかり息子さんに伝わることが先決なんじゃないかと思います。