「こしあんバー」なぜヒット? つぶあん派も魅了、「生あん」の開発背景を聞いた
あずきバーなどを製造・販売する井村屋(津市)は11月、「こしあんバー」を数量限定で発売した。昨年は発売から2週間でほぼ完売となるなど話題を呼んだ。生産体制を整え、供給量を大幅に増やした今回も売れ行きは好調だという。2024年4~9月期には、定番「あずきバー」の売り上げ本数も過去最高を記録するなど、同社の「あん」へのこだわりが、アイス市場での存在感を高めている。 【画像】「あずきバー」と「こしあんバー」どう違う? 写真でわかる「それぞれ」の魅力、あずきバーの製造過程、ミルク&抹茶も人気(9枚) こしあんバーは、あずきバーの発売50周年を記念して2023年8月に数量限定で登場した。以前から寄せられていた「こしあんタイプのアイスをつくってほしい」という要望に応え、開発を進めた 販売に際して、井村屋は従来とは異なる客層の取り込みを目指した。「調査によると、こしあん派は若年層に多い傾向があった。あんこは好きだが、あずきバーを購入しない若年層の取り込みを狙った」と、商品開発部の中山美里さんは説明する。 価格は、既存のあずきバーと同じ86円(希望小売価格)だ。消費者が選びやすく、両方を楽しめるよう、同価格で提供している。開発には1年半を要したというが、当初は社内でも「こしあんタイプのアイスは売れないのでは」という懸念があった。 しかし、発売直後からSNSを中心に想定以上の反響を呼び、従来のつぶあん派からも支持を得た。同社経営戦略室の近藤修司さんは「あずき加工を得意とする井村屋が出す『こしあんのアイス』への期待値が高かったことも要因の一つ」と分析する。
「生あん」の製造にこだわる
井村屋では、こしあんを使った最中やバーアイスを手がけてきたが、ここまで特化したバーアイスは初めて。開発にあたって最大の課題は、こしあんならではの味わいと食感の実現だった。 「生あん、砂糖、小豆、食塩と、原材料の構成がシンプルであるため、ごまかしが効かない。こしあんは、つぶあんと比べて単調な食感になりやすいことから、最後までおいしく食べられるよう0.1%レベルで配合を調整した」と中山氏は振り返る。豆臭さや甘さで飽きがこないよう、繊細な調整が必要だったという。 その後の課題は、生産体制の確立だった。こしあんバーの核となる「生あん」は、小豆を水にさらして中身だけを取り出したもので、この工程には手間がかかる。販売時期が昨年の8月から今年は11月となったのも、この「生あん」の製造が要因だ。 近藤氏は「生あんの供給量が限られていたが、今年は新たな製造設備を導入した。生産ラインを整備したことで、昨年を超える数の再販体制が整った」と語る。