一青窈さんが問う「闇バイトや無敵の人」犯罪の深層 犯罪心理学者・出口保行さんを訪ねて【後編】
一青:犯罪が起きやすい環境や犯行の動機がわかれば、未然に防ぎやすくなると思いますが、それがなかなかわからないケースもありますよね。 最近、長年にわたってSNS上で他人になりすまし、他人を欺き続けた人のドキュメンタリーを観たのですが、結局最後までその人の動機が解明されないまま終わってしまいました。私にとっては不可解でならなかったのですが、一体なぜ人はこのようなことをしてしまうのでしょうか。 出口:もちろん、単なる「欲求」でなりすましをしている場合もあると思いますが、その背景には「主張」があることが多いように感じます。何らかの欲求があって、それに基づいた行動をとるのは人間にとって当たり前のことですよね。
特に子どもに多く見受けられるのは、単にモノが欲しいから盗むのではなく、他の目的があって万引きをするケースです。そうした場合、理由を突き詰めていくと、親や先生の気を引きたいから、叱ってほしいから、かまってほしいから、などの主張が裏に隠れていることが多いように思います。 なりすましの件も詐欺目的でないなら、何かを主張したいと思っていた可能性があります。外から見える動機と、本当の動機の部分がズレることがあるので、それをどのように分析するかが、私たちにとっての重要な仕事です。
■素人が犯罪に加担する闇バイト 一青:インターネットテクノロジーの発達によって、昔と比べて犯罪の傾向に何か大きな変化が起きていると思われますか。 出口:それは、まさにそうだと思います。時代とともに犯罪もどんどん進化していくので、私たちはそれについていくのに必死です。 少し前に話題になった闇バイト系の犯罪も、10年前には存在していませんでした。よく、「最近の犯罪の何がそんなに従来の犯罪と違うのか」という質問をいただくのですが、その違いは、「素人が犯罪に加担することが増えている」ことです。
昔は大きな犯罪に関わるようになるまでには、それなりの道のりがありました。まず少年の非行から始まり、何度か検挙され、こうやったら捕まるとわかっている人たちがそれでもまたやってしまったという犯罪歴があったのです。 ところが、今やっている人たちはド素人なので、自分のしていることがどんなことにつながるのかがわからないまま、犯罪に巻き込まれていることが多いように思います。 そうした素人の犯罪者たちにしてみると、自分は罪を犯しても仕方がなかったと思っているわけです。いつどこに集まれと言われ、そこで、イヤーモニターから指示される通りにやっただけ、だと。