度重なる緊急事態を克服 なぜドイツが優勝できたのか
■度重なる緊急事態も克服 アルゼンチンとの決勝戦のキックオフ直前に発生したドタバタ劇が、ドイツの強さの秘密を逆に物語っていた。すでに発表されていた先発メンバーに名前を連ねていたMFサミ・ケディラが、試合前の練習でふくらはぎを負傷。プレーが不可能となる緊急事態に見舞われた中で、ヨアヒム・レーヴ監督が代役に指名したのがMFクリストフ・クラマーだった。 23歳のシンデレラボーイは今大会初先発。ポルトガル、ガーナ、アメリカと対戦したグループリーグでは出番がなく、アルジェリアとの決勝トーナメント1回戦の延長後半、フランスとの準々決勝の終了間際にそれぞれ途中出場しただけで、プレー時間は合計で20分強にすぎなかった。 ■選手層の厚さ 誰が出場しても同じサッカーができる 元日本代表MFで現在は解説者を務める水沼貴史氏は、今年5月に代表デビューを果たしたばかりのクラマーがワールドカップの決勝という大舞台で先発した点に、「ドイツ代表の選手層の厚さを感じずにはいられなかった」と振り返る。「ケディラの欠場は、ドイツに少なからず影響を与えると思っていた。フランス戦、ブラジル戦と、バスティアン・シュバイシュタイガーとトニ・クロースとで組んだ中盤の3人が上手く機能していた。トライアングルの一角を占めていたケディラを欠いたことで、中盤で相手に与えるプレッシャーが減ってもおかしくはなかった。そうした状況で初先発のクラマーを迷うことなく送り出した点に驚きを隠せないし、メンバーが豊富で、誰がピッチに立っても同じようなサッカーができることを証明したと思う」。 緊急事態はキックオフ後も続く。相手選手と激しく接触して脳しんとうを起こしたのか。前半31分の段階でクラマーがプレー続行不可能となると、レーヴ監督はFWアンドレ・シュールレを代わりに投入。フォーメーションをそれまでの「4‐3‐3」から「4‐2‐3‐1」に変更した。