度重なる緊急事態を克服 なぜドイツが優勝できたのか
それまでアンカーを務めていたシュバインシュタイガーは、1列下がってきたクロースとダブルボランチを組んだ。シュールレが2列目の左、メスト・エジルがトップ下、チーム得点王のトーマス・ミュラーが右に入る布陣を指示されても、もちろんドイツはピッチの上でノッキングを起こさない。 前出の水沼氏は、前半途中に見せたスムーズな戦術変更もドイツの強さの理由として挙げる。「選手個々が複数の戦術に対して柔軟に対応できるし、それぞれの戦術眼も非常に高い。決勝戦におけるドイツは、メッシを封じる上で特別な対策を講じなかった。その証拠に、オランダとの準決勝に比べてメッシがドリブルを仕掛けた回数が多く、自らのシュートを含めてチャンスも作っていた。ドイツは大会を通じて相手に合わせるのではなく、自分たちを常に主に置いて、どのようにすれば上手くボールを回せるかを考えていた。トップ下を置かない4‐3‐3でも、ミュラーやクロースがスムーズにその位置へ入っていける。戦い方において数多くの引き出しを持っていたわけであり、高度な要求を確実に実践できる選手たちを、レーヴ監督がしっかりとまとめていたことになる」。 今大会のドイツ代表は、4大会連続出場でワールドカップ通算得点記録を塗り替えた36歳のFWミロスラフ・クローゼを筆頭に、キャプテンのDFフィリップ・ラームやシュバインシュタイガーの3大会連続出場組、ミュラーやエジルらの2大会連続組、そして延長後半8分に千金の決勝ゴールを決めたFWマリオ・ゲッツェ、アシストしたシュールレらの初出場組と非常にバランスが取れた構成になっている。 ■優秀な若手が集まるバイエルン 後半43分にクローゼに代わってゲッツェが投入された時点で、ピッチに立つ11人のうち実に7人をバイエルン・ミュンヘン所属の選手が占めた。ゲッツェはボルシア・ドルトムントから、MVP級の活躍を演じた守護神マヌエル・ノイアーはシャルケからバイエルンへ移籍している。