度重なる緊急事態を克服 なぜドイツが優勝できたのか
ブンデスリーガ2部以上のクラブからは外国人枠が撤廃され、同時に12人以上のドイツ人と契約することが義務づけられた。うち8人はドイツ国内の出身者で、さらに4人はそのクラブのユース出身とすることも定められた。ドイツ代表戦関連の収入の50%がブンデスリーガに分配され、代表選手輩出の実績に応じて各クラブに支給されるお金の流れも育成のスピードを加速させる。 今大会では活躍するまでに至らなかったが、ともに20歳のMFユリアン・ドラクスラーとDFマティアス・ギンターも23人に名前を連ねている。前者はシャルケで、後者はフライブルクでレギュラーを務め、順調に成長すればディフェンディング王者として臨む4年後のロシア大会ではドイツ代表の主軸を担うだろう。協会とリーグが一体となり、14年の歳月をかけて結実させた大改革を水沼氏はこう評価する。 ■ブンデスリーガ全体に活気がある 「過去にワールドカップ王者になった国は、それなりの馬力があるということ。ブンデスリーガ全体に活気が出てきているし、今年は準決勝で負けたが、チャンピオンズリーグではバイエルンが実績を残している。ドイツを取り巻く流れはこれからも停滞しないだろうし、ますます強くなっていくのかなとも思う。ブラジル大会でドイツが見せたのは、パスサッカーだけではない。スペインのポゼッションサッカーと比べてパスの長さを変えられるので、相手が強烈なプレッシャーをかけてスペースを消し去る戦法に出てきても、ロングパスで局面を変えることができた。スペインのスタイルを、さらに進化させた形と言っていい。今後の模範になるというよりは、技術の高さとフィジカルの強さが伴わないとまず無理なサッカーであり、国内リーグの態勢も含めた環境といったものも必要になってくる」。 世界のサッカーの潮流を生み出す舞台が、UEFAチャンピオンズリーグに移って久しい。ならば、南米大陸開催のワールドカップで初めてヨーロッパ勢が頂点に立ったブラジル大会は何をもたらすのか。ドイツをもっとも苦しめたのはアルジェリアだった事実を、水沼氏は何よりも重視する。