その日の気分で学校を休む小6娘。受験勉強にも後ろ向きになり…【小川大介先生の子育てよろず相談室セレクション】
教育家の小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えしてきた『小川大介先生の子育てよろず相談室』。その中から、特に反響の大きかったお悩みを漫画でご紹介します! 【このお悩みをマンガで読む】4月から不登校気味の小6娘。何をどこまでサポートしてあげればよいのか(画像8枚) ■Fさんのお悩み 小6の娘が4月から不登校気味です。最初の頃は、登校する意欲はあるけど、朝になると起きられずに機嫌が悪くなり、それが過ぎると普通に過ごし、翌日の再登校に意欲を見せるという状態でした。そこで病院を受診したところ、起立性調節障害と診断され、血圧を上げる薬を服用することで、朝の症状は軽くなりました。 登校する日もぽつぽつと出てきて、登校したいのにできないという状態からは脱せられたのですが、今度は本人の気分次第で登校するかしないかを決めるようになりました。楽しそうなイベントがある日は登校するけど、それ以外の日は行かないという状態です。娘に何度か話を聞いているのですが、いじめとか悪口を言われたとかは一切なく、ただ、女の子特有の集団行動が苦手で、家にいたほうがラクだからとのことでした。 また、通っていた塾も今は休塾状態で、受験勉強にも前向きになれていません。通塾しない原因としては、「男性の先生との関わりが嫌」「自分のペースでできないことが嫌」「現状の成績を直視するのが嫌」ということのようです。もともと完璧主義&心配性で、思考のクセが0か100かみたいなところがあるせいか、現状の自分と理想の自分とのギャップに、本人が投げやりになっているというか、見たくないところは見ないようにしてやり過ごしているように見えます。 今は週に1回、算数の個別授業(女性の先生)は嫌がらずに通っているのと、別の塾の志望校講座も週1で受けています。ただこちらは気分次第で対面受講だったりオンライン受講だったりまちまち。家庭学習も気持ちが向くとやるという状態です。 親としてはまずは学校に通えるようになること、受験はその次と考えております。ただ、学校生活にしろ受験勉強にしろ、今の後ろ向きなままの状態で中学生活に突入してしまうと、その後も前向きに生活するというのは難しくなるのではと危惧しております。現状の娘の状況に対して、親として何をどこまでサポートしてあげればよいのか、アドバイスをお願いします。(Fさん・44歳) ■小川先生の回答 ■意識的に過ごした経験の積み重ねが、人を前向きで意欲的にする土台となる まず、お子さんのことを非常によく観察されていて、親としてできる努力をされているところは自信を持っていいと思います。ただ、助けることに注力し過ぎたため、ずっと保護された状態で育ってしまい、結果として本人の自分理解がうまく成長しないままこの年齢まできてしまったような気もします。学校生活、友達付き合い、将来のことなど、どんな過ごし方をしていきたいのかという明確なビジョンを、本人は持てていないのではないでしょうか?そのため、意欲的にもなれないし、そのときの気分に左右されやすいのだと思います。 まずは、どう時間を過ごすかを自分で決め、意識的に過ごすという体験を練習させてあげたほうがいいと思います。おそらく1日という単位だと本人には大き過ぎるので、この2時間をどう過ごすかくらいから始めるといいでしょう。そしてその2時間が、自分にとってどうだったか、どんなことを感じたか、どんなことができたかなど、本人として得たものを振り返り、言葉にすることが大切です。 好きな本を読んで面白かったとか、散歩してこんな店を見つけたとか、どんなことでもいいので、「今過ごした時間はこんな中身だったね」というのを1分でもいいのでおしゃべりする時間を作ってあげましょう。毎日なんとなく過ごしているだけで意識的に理解する時間を持たせないままだと、せっかく体験したことも経験にはつながりません。自分で決め、意識的に過ごせた経験値を貯めていくことが、自分自身を意欲的にしていく土台となります。 ■満足度を数値化し、客観視させる プロセスを踏まずに結果だけを求める傾向というのも、実は自分を振り返り言葉にするというサイクルを経ずに今までやってきたことに一因があります。結果だけを欲しがって途中経過に向き合ってこなかったぶん、理想の自分と現実の自分が乖離し過ぎて、なおさら投げやりになってしまうのでしょう。 娘さんのようにある事柄を0か100かで捉えがちな子には、「スケーリング・クエスチョン」というアプローチ法がおすすめです。これは、今の状態を数字で表現してもらうもので、例えば1時間遊んでまだ物足りないとなった時、「もともと遊びたいと思ってたのが100とすると、どのくらい遊べたの?」と聞いてあげます。答えが20だとしたら、「残りの80を満足させようと思うと日付を超えてしまうから、明日また遊ぼうね」というふうに、今自分が感じ取っている感情が何%なのかという捉え方をさせてあげるのです。そうすることで、物事を客観視して選べたり、組み立てて考えたりという導きに繋がります。 ■メモに記録し「できたこと」に目を向けることで自信に繋げる そしてできれば、『今日の朝は満足度10、夕方は80、夜は10』というように、メモ程度でいいので記録として残していくのがおすすめです。自分の心の動き、感情、満足度を数字でメモを残すことによって、「今日1日最悪だと思ってたけど、よく見たら80%以上の時間も結構あったな」と思えると、それは結果的に自信にも繋がります。これはカウンセリングの処方として実際に用いられている方法で、部分的な捉え方を全体視させず、冷静に時間を切り分けていくことで、心を安定させるのです。 今の娘さんに対する親としての最大のテーマは、どう自信を育んであげるかということに尽きると思うので、そのためにも、「あなたは今日一日意味ある時間を過ごしたよね」という記録を残してあげることは重要。メモを残し、それが記録として貯まっていった結果、自分ができることや身に付いたものが増えたとか、楽しく時間を過ごせたと思えるようになると、自分に自信が持てるようになるのではないでしょうか? 一足飛びに全てが劇的に変わるものではありませんが、本人の中にちょっとずつでも自分自身を説明するものが貯まっていくような感じにしてあげると、いい方向へ進んでいくと思います。 ■回答者Profile 小川大介先生 教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。 京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。 漫画=きたがわなつみ/文=酒詰明子