廃業予定の八百屋を買い取ってアップデート バイト出身の経営者が挑んだ拡大戦略と組織改革
野菜ジュース店で利益を生み出す
このリニューアルで、八百屋に併設していたジュース店「66KITCHEN」も一新しました。 ジュース店は元々、若月さんが後を継いだばかりの2019年7月、DIYで仮設店舗を作って始めました。それまで廃棄したり、1かご100円で売ったりしていた野菜やフルーツを有効活用しようという、若月さんの妻のアイデアでした。 素材の新鮮さにこだわり、注文後に野菜や果物をミキサーにかけて提供しているのが特徴です。 当初は従業員を使わず、若月さん自身が楽しんでやっていましたが、店舗リニューアル後に、スムージーやかき氷などメニューも増やしました。今では夏場にはしっかりと利益を出せるようになったそうです。
飲食店向けの卸販売もスタート
先代から引き継いだ本店は従業員が育ち、若月さんは次の展開を模索していました。そんななか、コロナ禍で空いた店舗があり、2021年8月、町田駅前に新店をオープンしました。現在は黒字化しています。 若月さんはこれを機に、飲食店向けの野菜の卸売りも始めました。先代は現金主義だったため、掛けでの販売はしていませんでした。しかし、飲食店に卸す場合、売り掛けでのやりとりが必要になります。 町田駅前に店をオープンして以降、周辺の飲食店から相談を受けることが増えたため、若月さんは飲食店向けの売り掛け販売を1店舗ずつからスタート。現在は約40店舗に野菜を納入しています。 町田店に取りに来てもらったり、本店から配達したりするなど、各店の要望にも対応しています。元々は飲食店からの依頼で始まりましたが、今では小さな八百屋1軒分の売り上げにまで広がっています。
給与体系を時給から固定給に
若月さんが店を引き継ぐ際に決めたのが、従業員がより安心して働ける環境づくりです。社員の給与体系を時給制ではなく、固定給に切り替えました。 「若いころは、時給制のおかげで給料が高くなるのがうれしかったのですが、結婚して子どもができると、体を壊すと給料が減るという不安が出てきました。自分で作った会社では、正社員を固定給にしました」 野菜の仕入れのスタイルも変化を加えました。それまでは午後9時過ぎに市場に入って、他の八百屋や仲卸が来る前にいいものをピックアップしていましたが、「いい物を安く買えるメリットはありますが、かなりの重労働でした。なので、これに加え、仲卸に事前に注文を出し、特売品があったら買うという典型的な八百屋の仕入れ手法も導入しました」 このことで従業員の労働時間も減らすことができたそうです。