40代50代「更年期の不調」を感じ始めたら?医師に聞く、体の変化との向き合い方
家族や職場に理解してもらうには
おぐら:不調を感じ始めたのは子育てが一段落して、次は仕事を思いきりしよう! と決意した時期。それなのに集中できない状態で、一日じゅうソファに横たわる日もありました。できない自分が悔しくて…。 高尾:8年前だとまだ、本人も「なまけている」と思っておかしくないし、周りもそう思ってしまう時代でした。今ではずいぶん世の中が変わってきていて、企業などで男性が女性の健康課題について学ぶ機会も増えています。 おぐら:そうなんですね。当時は、家族には相談できませんでした。なんとなく話題にしづらいテーマというか…。 高尾:家庭でも職場でも、更年期の女性に対して「そっとしておこう」という風潮でしたよね。「そっとしておこう」はいい言葉の反面、放置するという意味も。これから大事なのは、女性側が「ちょっと調子がよくないんだよね」と言葉で伝えられるようになること。頼めることは人に頼んで、近い人に調子が悪いことを知ってもらう。それだけでも気持ちはラクになりますから。パートナーがいるなら、一緒に考える機会になれば。 おぐら:ある意味、更年期は夫婦関係を見直すチャンスですね。うちは結婚当初から夫が激務で、私がワンオペで家事と子育てをこなしてきたので、このままではいけないとずっと思っていて。これを機に話し合ってみることで、老後に少し明るい兆しが見えそうです。 高尾:更年期のしんどさも夫婦の共通課題にできるといいですよね。この時期のコミュニケーションは、この先30年の夫婦関係に影響が出ると思うんです。「更年期がひどかったとき、私どんなふうに見えてた?」と、聞いてみるのもありだと思いますよ。
更年期と自律神経の乱れの関係
おぐら:更年期より前の世代で、不調の原因がホルモンバランスではなく、自律神経という方もいますか? 高尾:はい。生理は順調だけど更年期みたいな不調を感じる方を、世間では「プレ更年期」と呼んだりします。これは医学用語ではありません。ホルモンは関係なくて、自律神経の働きがいまいちな状態で、そのせいでなんとなく調子が悪いと感じる。30代~40代前半の女性に多いですね。 おぐら:生理不順だった私の場合は、自律神経は関係ない? 高尾:いいえ、ホルモンと自律神経というのは同じ視床下部という脳の部分がコントロールしているので、お互いに影響を及ぼし合うんです。ホルモンの変動が自律神経の不調を引き起こすというのは確かなことで、女性だとまさにゆらぎの時期(更年期)に汗やほてりや動悸が起きるんですね。 おぐら:なるほど。では、生活のなかで自律神経を整えるセルフケアを取り入れれば、更年期の症状が緩和されることもあるのでしょうか。 高尾:ええ、ものすごく(笑)。まずは運動や食事、睡眠などの生活習慣の見直し。それに加えて呼吸法や音楽、ヨガ、香り、ツボ押しなど。害がなくて自分が効果を感じるならば、続ける価値は大いにあります。更年期世代は子どもや夫、親の介護、仕事など複雑な悩みを抱える世代。他人は変えられないので、せめて自分自身をよい方向に変えていきましょう。 おぐら:今日のように更年期の悩みを聞いていただくと、とても心が軽くなると感じました。自分に合う対処法を見つけるべく、セルフケアもどんどん試してみようと思います。
ESSEonline編集部