ミランが総合トップ。ヴィンゲゴーも好位置で追う 前半戦レビュー|ティレーノ~アドリアティコ
アユソがガンナらを下してオープニングウィン
大会の特徴のひとつとして、初日か最終日に短い距離の個人タイムトライアルが設定されることが挙げられる。近年は初日に設けられることが増え、そこで発生したタイム差をもって翌日からのロードレースステージに向かっていく形だ。 10kmで争われた第1ステージ。ルートはほぼフラットであるものの、この日はレース途中から雨風が強まるとの予報があり、有力視選手たちの多くが早い順番でのスタートを選択。 個人総合優勝候補の筆頭であるヴィンゲゴーはチーム一番手、全体の3人目でコースへ出て、11分46秒でフィニッシュ。実質このタイムが基準となった。 数人がヴィンゲゴーを上回ったなか、総合争いのライバルとなるフアン・アユソ(UAEチームエミレーツ、スペイン)が11分24秒で走破。すると、このタイムを上回る選手が最後まで現れず。このステージの最右翼と目されたフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)も、1秒届かなかった。 大会最初のリーダージャージ着用者となったアユソ。ヴィンゲゴーに対し22秒差をつけて、ロードレースステージへと駒を進めた。 199kmに設定された第2ステージは、スプリンター向けのレイアウト。4人の逃げは距離を経るごとに人数を減らし、フィニッシュまで36kmのポイントで最後の1人も吸収された。 スプリント態勢へ移りつつあったメイン集団では、カヴェンディッシュが残り18kmでパンクし戦線離脱。残り5kmでは数人が絡むクラッシュが発生し、クリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック、イギリス)が巻き込まれた。 混迷の集団はそのままフィニッシュ前の勝負へ。最後のコーナーを抜け、残り300mでメルリールが早めの仕掛けに出るが、これをすぐにチェックしたフィリプセンが先頭へ。ライバルスプリンターがうまく加速できない中、さすがの勝負強さで今季初勝利をつかんだ。
スプリンターが躍動の大会前半戦
第3ステージ(225km)からは本格的に内陸部へ。逃げが2人と少なかったこともあり、集団は長い時間容認し、最大で11分までタイム差が広がる。断続的に雨が降るなか、中盤から本格的にペースをコントロールしたメイン集団は、残り22kmで逃げをキャッチした。 以降、数チームが入り乱れてのポジション争いが激化。集団には多くの選手が残り、スプリントフィニッシュのムードが高まる。前日勝利のフィリプセンやジョナサン・ミラン(リドル・トレック、イタリア)らが単騎でポジション確保に動く一方で、最後に主導権を確保したのはバーレーン・ヴィクトリアス。最終コーナーを抜けるとケヴィン・ヴォークラン(アルケア・B&Bホテルズ、フランス)がスプリント開始。その脇からフィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス、ドイツ)も加速。ミランがそれを追い、懸命に踏みとどまっていたフィリプセンは他選手と接触し最終コーナーで落車した。 上り基調のスプリントはミランらの追い上げをかわしたバウハウスに軍配。2023年のツアー・ダウンアンダー以来の勝利で、久々のポディウムで笑顔がはじけた。 このステージで惜しくも2位だったミランは、翌日の第4ステージ(207km)で見事に雪辱を果たした。最大6人の逃げで始まったレースは、フィニッシュまで30kmを切って3選手がアタックし抜け出す。フィニッシュ地点を含む周回コースに入ったところで、その差は約1分。しかし先頭の3人は粘りに粘り、1分差を最終盤までキープした。 フィニッシュへ向かう間、登坂区間でメルリールが遅れ脱落。最終局面へとつながる上りでは逃げていたうちの2人が捕まり、あとはヨナス・アブラハムセン(ウノエックス・モビリティ、ノルウェー)ただひとり。集団はすぐ目の前まで迫っているものの、上りで大多数のチームがアシストを使い切ったこともあり、エーススプリンターたちがお見合い。アブラハムセンとの差が再び開きつつある状態で最終のストレートに突入した。 トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)の加速をきっかけに集団はスプリントを開始。逃げ切りの可能性が高まったかに見えたアブラハムセンだったが、こうなると勢いは集団が勝る。アブラハムセンをパスし、伸びてきたのはミラン。リドル・トレック移籍1年目のスピードスターが、ついに今季のワールドツアーで勝ち名乗りを上げた。