ローマ字で書いたって英語じゃなきゃ意味不明! 訪日外国人の増加に伴って密かに「標識」の表記が変化していた
日本の標識がグローバル化
普段は荏原郡の自宅にこもってシコシコ原稿を書く、猫にエサをやる、ウンチを捨てるなどばかりしているため、筆者は都会の事情に疎い。だが過日、所要があってJR渋谷駅前のスクランブル交差点を徒歩にて通ったところ驚いた。周囲を歩く人間の(目測によれば)およそ8割が、外国人観光客と思われる人々だったのだ。 【画像】飯田橋は「Iidabashi」なのに神田橋は「Kanda Bridge」 筆者がこの交差点をしばしば渡っていた30年ほど前は、外国人観光客の割合など(目測によれば)1割にも満たなかったはずだが、世のなかというのは変われば変わるものである。荏原郡にこもっていても「インバウンド云々」という報道はもちろん耳にしていたが、実際に目の当たりにすると、「ううむ……」というニュアンスでさまざまな感情が去来するのであった。 で、さまざまに去来した感情のなかのひとつが「道路標識」についてのものだった。 我が国の道路標識のなかには、諸外国と同形状・同スタイルのものもあり、また外国人観光客各位のなかには、日本語(とくに漢字)を難なく解する方もいらっしゃろう。だがおそらく大多数の各位は日本語(とくに漢字)には不慣れであり、筆者にとってのアラビア語と同じニュアンスに見えているはず。そして諸外国とは異なる形状・スタイルの道路標識も多いため、「……このままではそのうち、交通的な大混乱が生じてしまうのではないか?」と危惧したのだ。 しかし、我が国の優秀な官僚各位は、筆者なんぞが危惧するまでもなく、すでに対策を取っていた。この10年ほどで、主に東京都内の道路標識は外国人観光客向けに大きく進化していたのだった。 たとえば「一時停止」の道路標識は、本邦においては赤い逆三角形のなかに「止まれ」という日本語が書かれている。しかし、「止まれ」という漢字およびひらがなは、おそらく多くの外国人観光客にとっては「アラビア語」である。しかも世界的には、一時停止の標識は赤い逆三角形でなく「赤い八角形」である場合が多い。 そのため、「一時停止」という、クルマを運転するうえではモーレツに重要な標識が外国人観光客ドライバーに認識されず、都内のそこかしこで一時停止不停止に伴う痛ましい交通事故が多発してしまうのでは──と思ったのだが、一時停止の標識は2017年に「止まれ STOP」という、英語も併記されたバージョンに変更され、全国で順次更新中となっている。これでとりあえずひと安心ではある。