「気候危機」で温暖化対策が岐路に立つ中、COP29開催 危機感共有して前進できるか焦点
今夏、地球は北半球を中心に熱波に見舞われた。世界気象機関(WMO)は2024年の世界平均気温は昨年を上回り、観測史上最高になる見通しだと発表した。スペインは豪雨による洪水被害が拡大し、オーストラリアでは熱波と乾燥が主原因とされる大規模森林火災が発生した。世界中で地球温暖化が影響しているとみられる熱波や豪雨、干ばつといった極端な気象が頻発して甚大な被害を出している。
国連環境計画(UNEP)は各国が気候変動対策を強化しなければ世界の平均気温の上昇幅は、パリ協定が目指す「1.5度」を大きく超えて今世紀中に最大3.1度になると指摘した。「気候危機」が顕在化し、国際協調、連携による対策強化は待ったなしだ。
そうした厳しい状況の中で国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)が11月11日、22日までの日程でカスピ海西岸に位置する旧ソ連構成国のアゼルバイジャンの首都バクーで始まった。発展途上国に対する新たな資金(気候資金)が最重要議題で、危機感を共有して合意できるかが焦点だ。各国の現在の温室効果ガス(GHG)排出削減目標を高めて「1.5度」実現に向けた議論が進むことも求められている。
ただ、米大統領選挙で温暖化対策に後ろ向きのトランプ氏が勝利し、世界第2位のGHG排出大国は再びパリ協定を離脱するのはほぼ確実だ。「トランプ大統領再登場」はCOP29の交渉に暗い影を落としそうで、国際強調が前提のパリ協定を基本的な枠組みとする温暖化対策は岐路に立っている。それだけに今回会議でどこまで成果を上げるか、国際社会の高い関心を集めている。しかしどのような形で合意が得られるかは予断を許さない。
気候資金「年数兆ドル」を求める途上国
COP29に向けた事務レベル会合では、途上国に対する2025年以降の新たな気候資金の支援目標額が最大の焦点だ。途上国向け資金はこれまでのCOPでも大きな議題になってきた。途上国は「温暖化は二酸化炭素などのGHGを大量に出してきた先進国の責任」「GHGをさほど出さないのに深刻な被害を受けるのは我々だ」などとして先進国に対し、温暖化に「適応」しながら経済成長に伴って増えるGHGの削減対策資金を求めてきた。