男性が育児退職してはいけないのか?フリーランス翻訳者という選択
会社員をやめたのは正解⁉
夫婦ともフルタイムの共働きで親の助けなしに子育てをするのは大変です。しかも我が家の場合、長男は「元気はいいけど、病気には弱い子」とかかりつけのお医者さんに言われるタイプだし、次男はぜんそくの気があるしで、朝起きたら子どもが体調を崩しているなど何回あったかわかりません。そういうときは、ベビーシッターさんの手配をしてから混む前の朝イチで小児科に連れて行きました。病気対応は基本的に私です。そういう融通が利かせられるようにとフリーランスになったのですから。 夫婦とも通勤に片道1時間以上かかるような組織勤めのままだったらどうにもならなかったはずです。会社員を辞めたのは正解でした。 ですが、本来は、勤めていても子育てくらいできて当然でしょう。これほど大変なのはほんの何年かであり、その間だけ融通の利く働き方ができればいいのですから。
息子からの言葉
私はあくまで「育児の時間的やりくりを家庭内でつけられるように転職した」のであって「主夫」になったわけではありません。しかし、私も育児の担当であることは、『スティーブ・ジョブズ』を訳している頃も同じでした。 当時、子どもたちは中学生でした。夏休みですし学校行事もあり、まったく放っておくわけにもいきません。家族の協力もこのプロジェクトには不可欠だったと言えます。 無事、家族の協力を得て、3ヵ月あまり、気力・体力の限界ぎりぎりまで仕事に打ち込みました。最後は頭痛と吐き気をこらえながら、です。 そして2011年10月13日、『スティーブ・ジョブズ』の最終チェックが終了しました。「終わった~!」――ツイッターに書くと、仲間から次々とお祝いの言葉が届きます。でも、祝杯は何日かお預けでした。だって、飲んだら吐きますよ。飲まなくても吐きそうなんですから。 妻も帰宅し、家族そろって晩ご飯を食べ始めたとき、長男が私を見て言いました。 「お父さん、ようやくいつもの顔に戻ったね」
井口 耕二(翻訳者)