お金を運用するのに必要なのは3つの「基本」だけ…山崎元氏が後世に残した、今年こそ始めたい超簡単な投資術
運用資金は全額「全世界株式のインデックスファンド」でいい
運用資金の全額を「全世界株式のインデックスファンド」に投資していい。インデックスとは株価指数のことだが、全世界の株式で構成されたインデックスに連動する投資信託に投資するのだ。 今なら、通称「オルカン」こと「eMAXISSlim 全世界株式(オール・カントリー)」でいい。理由は、有利な形で分散投資されていて、運用の手数料が安いからだ。 手持ちの運用資金のすべてを株式に投資することに抵抗感があるかもしれない。 インデックスファンドに投資した場合の株式投資のリターンは、100年に二、三度クラスの「最悪の場合」でも1年に3分の1くらいの損失、同じくらいの確率の「幸運な場合」では4割くらいの利益、平均的には短期金利がほぼ0%なら年率5~6%くらい、だと実務の世界や学者の間では考えられていて、父も「そんなものだろう」と思っている。 正確な数字は誰も知らない。 本書の執筆時点(2023年秋)の日本の短期金利はほぼゼロなので、これプラス5%と見て、株式投資の期待リターンをおおむね「年率5%」くらいだと考える。現在の日本の税制では、実現した利益に対して約2割の税金が掛かるので、実質は年率4%くらいとなる。 この条件に、運用資金のすべてを投入することに君は抵抗感があるだろうか?確かに、「3分の1の損失」に当たると痛いし、日々の株価の変動が気になるかもしれない。 しかし、考えてみよう。特に、若いころの運用資金額はたかがしれたものであるはずだ。
自分自身のその他の経済的リスク
これに対して、自分自身のその他の経済的リスクを考えると、会社やビジネスの浮沈、給与・ボーナスの変動や、転職などによる収入の改善や逆に減少、健康状態の変化、家族や周囲の状況の変化、など多くのリスクに直面しながら、これらに「何とか対処している」はずだ。 例えば、お金が足りなくなれば、より多く働いて稼いだり、あるいは生活費を節約したりして、何とかなっているのではないか。 しかも、運用資金は「当面使わないお金」だ。数字で表れていて分かりやすいからといって、金融資産の損得にばかり注意を向けるのはバランスが良くない。では、月日が経って投資が進み、金融資産の額が大きくなった時にはどうなのか。 この場合、「3分の1の損失」の金額は、収入のアップダウンよりもかなり大きなものになっているかもしれない。しかし、金融資産の額がそもそも大きいということは、それだけ経済的な余裕が大きくなっているということだ。 やはり、「運用資金」を全額「全世界株式のインデックスファンド」で持っていて問題がない場合が多いはずだ。 お金を引き出そうとした時に、株価が大きく下がっているような事態が「結果的に」あるかもしれない。その時には残念に思うだろうが、「意思決定時点の(事前の)選択として正しかった」けれども、運が悪かったのだと考えて納得せよ。 その損失は「サンクコスト」(埋没費用。既に発生していて取り返しが不可能なコストのことで、意思決定上は無視するのが正しい)だ。それ以上の意思決定はできなかったのだし、株価はコントロールできない。 人生にあっては、コントロールできないことについて悩んでも仕方がない。できることは確率・期待値的に良い選択をして、後は好結果を祈るだけだ。それ以上はない。 しかも、損をしても、幸い「お金で済む話!」だ。命を取られたり、信用を失ったりするような問題ではない。