斜め後方死角撲滅大作戦 第2弾・ちっちゃな「サポートミラー」を試してみた 【MFクルマなんでもラウンジ】 No.12
いまのクルマは対衝突要件でボディ強度を上げなければならない都合上、どの柱(ピラー)も極太の造りになっている。 ことにリヤピラーの太さはどのドライバーにとっても悩みの種で、斜め後方からの接近物を隠してしまう。 値段の高いカメラを使うことなく、手ごろな価格で斜め後方の死角を抑える方法を前にご紹介したが、今回の「MFラウンジ」はその第2弾。 うってつけの製品が出てきたので自前購入し、その効果を試してみた。 悩みを解決してくれるのか? 【他の写真を見る】左後ろの接近自転車、サポートミラーでこう見える TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:山口尚志/カーメイト 斜め後ろの把握をより見映えよく 前に、ルームミラーにも左ドアミラーにも映らない車両左斜め後方の歩行者・自転車の存在を把握する方法をご紹介したことがある。 カーメイト製の「ミニミラー(CZ409)」をルームミラー左に設置。この鏡を左ドアガラスおよび後ろの左サイドガラスが映るように傾け、死角内にある左斜め後方からの接近物をつかみ、左折時の巻き込みなどを防ぐことを狙いとしたものだ。 取りつけにあたっての条件は次の3つだった。 1.後付け感が出てしまうのは譲歩するにしても、見た目の格好が悪くならないようにする。 2.取付部位はルームミラー周辺に限る。計器盤上やフロントピラーはもってのほか。 3.助手席サンバイザーを使うのに支障がないようにする。 ルームミラーにかぶせるワイドミラーは検討外。ワイドタイプは横方向も映すべく鏡面の曲率を上げているため、像が小さくなって距離感が狂ってしまうのと、何よりも標準ミラーの防眩機能が失われるのが嫌なので選択肢には入れないことにした。 というわけで、ミラー周辺のスペースを測り、カー用品店であれやこれやと眺めまわした挙句、補助鏡をカーメイトの「ミニミラー」に決めて得られた結果がこちらである。 本来の使い方ではないし、見た目は後付け感まる出しであまりいい格好ではないが、ダメ元で試した割に効果は想像以上だった。 これだよ、これ! 前置きが長くなったが、今回はその続編だ。 まるで私の要望を見て造られたかのような製品がある。さきの「ミニミラー」と同じカーメイトから発売中の、電子ミラー専用の「サポートミラー」だ。 いったん解決したお話の続編などまったく予定していなかったのだが、試さない手はない。実際に買って試してみた。 正式名称は、カーメイトの製品サイトと箱とで表記が異なっているが、サイト表記を信じると「サポートミラー 電子ミラー用」。トヨタ車用(NZ875)と日産車用(NZ876)があり、名のとおり、いずれも液晶のデジタルミラー用だ。 これは車両のデジタルミラー左裏にブラケットをかぶせて使用する。当然、トヨタ、日産とではデジタルミラーの本体形状が異なるからブラケット形状も違っているし、車両ミラー面と面一(つらいち)にするため、サポートミラー鏡面デザインもそれぞれ専用品となっている。 前に私が採った策とこのサポートミラー、「死角に入る自車左後方の様子をつかむ」という目的は同じだが、私とカーメイトとでは発想の原点が少し違っている。 防眩ミラー付き車に乗っている私の発想は、左折時の目視とは別に、平素直進中でもワイドミラーを用いることなく斜め後ろ視界を得ることはできないかという単純なものだった。対してカーメイトは、カメラが車両バックドアに設置されているなら液晶ミラーはクルマの真後ろを映すばかりで左斜め後ろなんか映すはずはなく、だったらあらためて別の鏡が専用に必要だろと考えた(と思う。)。 小学館・てんとう虫コミックス「ドラえもん」第33巻の「鏡の中の世界」のお話にあるように、ミラー向こうには逆の3次元世界(余談だが、私は、鏡は左右が逆になるのではなく、映る物体や奥行きが逆になると思っている。つまり鏡面を境とする面対称の世界なわけ)が広がっている・・・いわば鏡は反転世界を覗き見するための小さな窓だ。出入りはできないが、目の位置を変えれば窓正面から見えなかったものも見えるようになる。 どういうことかというと・・・ ↓ デジタルミラーの場合はそうはいかず、映像は写真やテレビと同じ2次元だから、アングルを変えたって映っているもの以外は見えない。ましてや車両真後ろを向いているカメラ映像に左後輪付近が映ろうはずがない。 おそらくこの製品を着想したカーメイトのひとは、平素デジタルミラーのクルマを使っていて「ん?」と思ったのだろう。 よく気づいたと思う。というのも、私はあのデジタルミラーを借りたクルマで使ったことがないから気づかなかったのだ。 使わない理由はいずれ気が向いたときに述べるとして・・・ 私が購入したのは日産車用。 日産用に決めた理由は後述するが、箱を開いて本体を取り出すと、製品は写真の印象より軽かった。これはいささか安っぽさにも通じるが、天井からぶら下がるミラーに取り付けるなら1gでも軽いほうがいいわけで、左後ろをしっかり見せてくれさえさえすればいいのだから、少々安っぽくても問題はない。 いったん設置してしまえばそうそう触れるもんじゃなし、見映えも悪くないから気にはならないだろう。 ブラケット側にはあらかじめ両面テープが貼られており、電子ミラー左背面にある受光センサーの逃げ穴もある。センサーが右(運転席側)にあるトヨタ車用はない。 角度調整は縦軸ヒンジで水平方向に行なうだけのもので、未使用時はさらに向こう側に90度倒すことができる。 全体にシンプルな造りだから、取扱説明書を見なくとも誰にでも理解できるだろう。ブラケットは車両ミラーに沿った形になっているので、つけられるようにしかつけられない。失敗することはないと思う。 ・・・ないと思うのだが、私の場合、自分のクルマに取りつけようとするとそのブラケット形状が問題になる。 苦手な加工作業にしぶしぶ着手 写真を見ておわかりのとおり、私のクルマ(旧ジムニーシエラ)のルームミラーはごくオーソドックスな防眩ミラー。ブラケットと形状が合わないため、そのままではつかない。それを承知の上で買ったのだった。 ここから先は加工のお話になるので、同じことをするひとがいたら参考にしてみてほしい。 日産用サポートミラーの、ミラー部のサイズは縦53×横70mm。トヨタ用は縦63×横71mm。いっぽう、ジムニーのルームミラーの上下寸は左部分で実測60mmだ。 無理矢理つけるならミラーよりわずかに丈のあるトヨタ用を選ぶところだが、ブラケットの形状から日産用を使うことにした。サポートミラーを適度な角度で使うにあたり、ブラケット面とミラーはできるだけ平行である必要がある。サポートミラーを上面視したとき、ブラケットは、トヨタ用がカーブしているのに対し、日産用はいくらか平面があるのと、その平面とルームミラー面が平行に近く、取り付けるのに好都合・・・これが日産用を選んだ理由だ。 言葉で説明するより、写真で見せるほうがわかりやすい。 つまりこういうことよ ↓ ところで上下寸は車両ミラーのほうが小さい。日産用のミラータテ寸は53mmだが、ブラケット分を加味しても車両ミラータテ寸より短い。ブラケット上下のつばが邪魔になる。だからこのつばは容赦なくカットだ。 最初ブラスチック用カッターを使ったが、不器用とせっかちとB型が災いしてどうにもうまくいかない。途中からホットカッターを使うことにした。はんだごての先をカッターに変えただけのもので、プラスチックを熱で溶かしながら不要部を除去する。不器用だから、プラスチック用カッターがホットカッターに変わったところで断面が汚いことに変わりはない。 不要部分をカットした姿がこちらだ。 あとはブラッケット平面とルームミラー背面を両面テープでくっつけるだけ・・・なのだが、事はそううまく運ばない。 ルームミラー、普段目にするぶんには何てことのない形をしているが、いざ何か取り付けものをしようとすると、その背面は複雑な形状になっていることがわかる。単なる平面板になったブラケットをあてがったところで、面でではなく、線状での接触となり、横から見ると隙間だらけになるのだ。 というわけで、その隙間が埋まるように、部分部分で枚数を変えながら両面テープを重ね貼りしていく。最終的には「貼りまくった」姿になった。つば部のカット断面は汚いわ、テープの仕上がりもデコボコだわ・・・こういうのが嫌だから自前加工は気が進まないのだ。手先が器用なひとはきれいに仕上げるのだろう。 というわけで、ルームミラーに貼り付けて完成だ。 決闘! ミニミラー 対 サポートミラー さて、確認作業だ。 前のミニミラーのときと同じく、車両左後方、かつドアミラーででも見えない位置に、歩行者か自転車に見立てた三脚を置く。 どうせなら、ミニミラーのときの写真も引っ張り出して比較してみる。 ミニミラーはリヤ左ガラスを大きく、左ドアガラスの後ろ3分の1を映し出していたが、小さいサポートミラーはリヤガラスをより遠方に、ドアガラスは後ろ半分ほどを映している。 これは曲率が自然な横長のミニミラーをルームミラーとラップさせているからなのに対し、サポートミラーのほうは小さくて曲率が高いため、見え方や距離感に違いが出てしまうのだ。これは仕方あるまい。 それでもドアミラーで見えない三脚の存在をサポートミラーはきちんと教えてくれるので死角低減の大きな助けになるし、小さいにせよ、トータルではサポートミラーのほうが広範囲を映し出している。 歩行者、自転車、バイクにクルマ、サポートミラーにどう映る? これで満足してはいけない。ここまではあくまでもただの確認。路上で近づいてくるのは三脚じゃなく、歩行者や自転車、バイクだ。公道で確認しなきゃいけない。 きちんと目視して何もいないことを確認したはずなのに、わずかコンマ何秒の間に、いったいどこから湧いてきたのかと思う自転車とのニアミスは少なくない。果たしてサポートミラーは斜め後方視界をどこまでサポートしてくれるのか? 左後方から接近する移動体がサポートミラーからどう見えるか、公道に繰り出していろいろと確認していく。 場所は毎日もれなく渋滞する夕方の環状8号線。断続渋滞する環8の右車線渋滞停車時を狙い、左後ろにいる車両を撮ってみた。 ここからはたくさんの検証写真が並ぶので、見るのが面倒な方は先へすっ飛ばしてください。 まず、ハイスピードで近づいてきたバイク。ちゃんと映る。この後、顔の横を飛んでいくハエのように、自車左サイドをひゅん! とすり抜けて行った。 この後、井荻トンネルにもぐり込んで・・・ 私は別にカーメイトのまわし者ではないが、どうやらサポートミラーの効果はメーカーの狙いどおりのようだ。 ただ、たとえドアミラーに映っていなくとも、接近車両がサポートミラーに映っていれば自車にかなり近づいている。サポートミラーに何かが映っている段階でそのまま左折や車線変更に入るのは禁物だ。相手がこちらを認識しているかどうかはわからない・・・やはり目視は必須である。 実際、このミラーに頼ってだけの左折や車線変更を試みても、左ターンシグナルを灯す前に本能的に恐怖心が湧き、とても目視なしにする気にはなれなかった。 左折時にしても直進時にしても、このサポートミラーはあくまでも接近車両有無の補助確認用にとどめるべきだ。 ルームミラー内の景色はミラー奥に流れていくのに対し、サイドを映すミニミラーの景色は運転席から見て左から右に流れるのが気になるような気にならないようなだったが、このサポートミラーには意外に横流れの印象はなく、気が散ることはなかった。 要改良点と意外な盲点 この製品、素性はいいと思う。 ただ、「サポートミラー」の適合をトヨタ車と日産車のデジタルミラー付車用に限っているのはもったいない。街のクルマを眺めれば、デジタルミラー車より、在来の防眩ミラー(「プリズム式」という)車のほうが多いと思うからだ。ここは通常ミラー車用も造るべきだろう。 輸入車は知らず、私の見たところ、国産車のルームミラーは、メーカー、機種問わず、形状やサイズにそう大きな違いはないと思う。数種類あれば多くを賄えるのではないか。 あるいは、ワイドミラーの取り付け方式を転用すれば1種類ですむ可能性も出てくる。 他社製品も含め、おっかぶせ型のワイドミラーは、片方がばね仕掛けになっている1対(実際には2か所なので2対)のピンでルームミラーを上下にはさんで固定するようになっている。このピン仕掛けをアレンジし、ルームミラー左側背面から上下に挟むなどの構造に変えれば汎用性を持たせることができそうだ。 実家に戻っていた妹のクルマから、今回の記事のためにかっさらってきた、偶然同じカーメイトのワイドミラー。 「貸して。」「いつ返してくれるの?」「さあ、年内かな。」 ・・・怒られた。 というわけで、電子ミラー用サポートミラーの改造品を実際に使ってみて、この部分は改良したほうがいいのではという注文点がいくつか出てきた。 もしカーメイト内で汎用品を造る計画が浮上したときには、ぜひとも「お客様の貴重なご意見として、今後の製品開発の重要な検討課題に」していただき、「担当者に伝えて」織り込んでほしいと思う(世の中のお客様相談室とかサポートセンターのこういう返答、とおりいっぺんで大っ嫌い! 電話がつながるまでは長いくせに、用件はものの5秒で終わるのが腹が立つ。)。 1.前後角調整機能も追加できないか。 現状、サポートミラーは水平方向には調整できても前後方向にはできず、その角度はルームミラー角で決まってしまう。後ろを見たいルームミラーとサイド後方を見たいサポートミラーとでは、角度が同じでいいとは限らない。実際、サポートミラーだけもうちょい下向きにできたらと思うシーンがあった。 そもそも適合外な使い方をしているのだからそれでもいいのだが、使用者の座高はひとそれぞれだ。ましてや、防眩機能でルームミラーを上向きにしたらサポートミラーも釣られて上に向くのだから、汎用品はルームミラーとは別に前後調整もできることが望ましい。 2.クローム処理不要 おっかぶせ型のワイドミラーは車両ミラーと同じ防眩機能がない代わり、眩惑防止のクローム処理がされている。 鏡面ガラスに防眩作動角と同じ角度のテーパーをつければいいだけだと思うのだが、ルーフからぶら下がる車両ミラーに取り付けるだけに、わずかでも厚みが増える=重量増を嫌ってクローム処理にしているのだと思う。となると昼間でも暗く映るような気がするのだが、とにかくそのクローム処理がそのままサポートミラーにも与えられている。たぶんワイドミラーの気分でそのまま横すべりさせたのだろう。 ただ、サポートミラーのクローム処理は、夜はもちろん、ミラーサイズが小さいだけに晴れた昼間でも場所によっては暗く感じることもあった。 クローム処理は、後方からの眩惑光が直撃するワイドミラーだけにあればよく、サポートミラーには要らないと思う。ミラーはサイドを向いているから、仮にハイビーム光のクルマが接近してきても運転者には影響しないだろう。 それよりは明るさと見やすさを優先し、クローム処理は省くほうがいいと思った。 3.薄く造ることを念頭に 思わぬ盲点が見つかった。写真をごらんいただきたい。 ・・・・・・・・・。 冒頭に掲げた取付条件のうちの3番目「助手席サンバイザーに干渉しない」を満たさないことが分かった。これがいちばん大事だったのに・・・ 運転中、左前方からの直射光をカットしたいときがあるから、みなさん、ひとり乗車のときでも助手席バイザーを下ろすときがあると思う。ミニミラーは裏のピポットを軸に向こうに押しやれば、バイザーを下ろしても接触知らずだったのだが、こちらサポートミラーは、向こう側に90度折った状態でもバイザーとかち合ってしまう。測れば旧ジムニーのルームミラーと左サンバイザーの間隔は25mmほどなのだが、ヒンジ部がバイザーとぶつかるほど分厚いとは思わなかった。 これも適合外のものを無理やりくっつけたゆえのことだから苦情でも何でもないが、もし汎用品を造るなら、全体をなるべく、なるべく薄くしてほしい。 汎用品なら軽自動車から使われる可能性がある。だいたい、私の旧ジムニーシエラは1300ccでも、しょせんは軽自動車ボディだ。車室幅のせまいクルマで使ったからこそ浮き彫りになった盲点だった。 4.価格をもっと安く この製品は適合車種を絞っているため、価格を安くしにくいのだろう、売価が高いと思う。 私が近くのオートバックスで買ったときは税込み2780円だった(2024年11月12日時点)。製品サイトには「オープン価格」と出ているから、正確には実勢価格というべきだ。 もちろん、万単位のカメラをつけるよりははるかに安いから、こういったものを売り出してくれたのは拍手パチパチなのだが、製品を単体で見たとき、見た目と値段とのバランスが取れていないような気がする。 安くなければたくさん売れず、たくさん造らにゃ安くはならず・・・値段の話になると必ず出る「ニワトリが先か、卵が先か」の論理だが、電子ミラー用はやむなし。その代わり、汎用品を造るなら前記1~3を満たした上で、できれば1000~1500円で売られればいいと思う。この記事のためにあらためてカー用品店を見てまわったが、曲率がほどほどの普及型ワイドミラーがこれくらいの価格ゾーンにあった。 クローム処理廃止&薄く作ることの材料費減 + 量産効果で、前後角調整機能追加分以上の上昇コストを吸収し、上限1500円で。 ・・・とまあ、自動車でも何でも、量産品というものは、仕上がりが簡単に見えるものでも難しいものを造ったのと同じくらい、設計に労力を費やしているものだ。 それを知っていながら、出来上がったものを買っただけの外野の気楽さでいいたい放題なことを書いたが、もしカーメイトが電子ミラー用ではない、通常ミラー用のものを造る際は、ここに書いたことも織り込んだ製品にしてくれたらいいと思う。 製品名にわざわざ「電子ミラー用」とあるのは、後々「通常ミラー用」が出てくることを示唆していると勝手に決め込むことにしながら、「サポートミラー」の効果報告を幕とします。
山口 尚志