円高進行で再成長を後押しか?!【ニトリ】2年続けて為替(円安)で約380億円の損失を計上…
失われた30年の後半、「ニトリ」は急成長を果たしました。 しかし円高を前提とするビジネスモデルであり、急速な円安を受けて2024年3月期は減益を余儀なくされています。 ◆【図表】ニトリ「為替影響(在庫為替影響・仕入為替影響)は?2022年2月期~2024年3月期 ただし2024年に入り7月以降、急速な円高が進み環境に変化が見られます。円高の恩恵が見込まれる銘柄として、ニトリを取り上げて解説します。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
デフレ後半に急成長を果たしたニトリ
2022年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻を契機に、世界的なインフレが進み日本も長く続いたデフレを脱しました。しかし失われた30年のデフレ期の日本でも、数多くの企業が成長を果たしています。 そのデフレ後半に大きな成長を果たした企業として、ニトリ(ニトリHD:9843)を外すことはできません。ニトリは円高の環境下、「海外工場で家具などを生産して国内に輸入販売する」というビジネスモデルによる格安の家具が話題となり急成長しました。
36期連続の増収増益記録がストップ、2024年3月期は遂に減益に
36期連続の増収増益が続いたニトリですが、2024年3月期は遂に減収減益に陥ります。 2023年3月期は決算期変更に伴う13ヵ月決算による増収増益であり、数字的には変則的な面がありました。しかし2024年3月期は12ヵ月決算であり、減収減益は紛れもない事実です。 輸入型=円高で利益を上げるニトリのビジネスモデルを考えると、近年急速に進んだ円安は同社のビジネスモデルを脅かす存在です。増収で円安の影響を防いでいた側面がありますが、成長鈍化により円安の負の影響が利益に及んでいると言わざるを得ません。
ニトリの為替変動の損益に対する影響
ニトリの業績は為替変動に大きな影響を受けます。同社のIR資料から各期の為替変動による損益の影響を取り上げてみました。 ●2022年2月期 前期比▲97億円(在庫為替影響+41億円、仕入為替影響▲138億円)/期末のドル円レート114.95円(前期末比9円の円安) ●2023年3月期 前期比▲381億円(在庫為替影響+106億円、仕入為替影響▲487億円)/同132.72円(同18円の円安) ●2024年3月期 前期比▲380億円(在庫為替影響▲119億円、仕入為替影響▲261億円)/同151.36円(同19円の円安) また、上記3期の経常利益は以下となります。 ・2022年2月期:1418億円 ・2023年3月期:1440億円 ・2024年3月期:1323億円 2022年2月期に1418億円の経常利益を上げた後、2023年3月期は為替で▲381億円の損失がありながら若干の増益、2024年3月期は為替による▲380億円の損失に加えて、前期に比べ1ヵ月少ない決算月ながら約▲100億円の減益に留まりました。 2023年3月期、2024年3月期は2期ともに前期比で18~19円の円安が進んでおり、同社のビジネスモデルに強い逆風が吹いた状態です。その中でも経常利益の減益は抑えられており、同社の努力の跡が垣間見えます。しかし円安は、ニトリにとって大きな逆風であることには違いありません。