バッタを倒しにアフリカに行った、前野ウルド浩太郎氏が「現地での大ピンチ」を乗り切った《意外な作戦》…こうしてキツさも越えた
食べてほしいほどの「バッタ愛」
――バッタ大発生時の駆除が最終目的の研究ですが、食べてほしいほどバッタ愛が強いのに駆除するのはつらくないですか。 前野:撲滅というのは、まったく考えていません。人間に害を及ぼすレベルに数が増えすぎることが問題なので、共存する、悪さをしない程度に抑える技術を開発したいですね。そうしたら、バッタが必要以上に人々から恨まれたりせずにすむのではないでしょうか。 私はむやみとバッタを殺す気はありません。研究のために解剖しますが、その命を奪うからには、彼らの亡くなってしまった命を論文のデータにして、墓標がわりに必ず残すことを自分のルールにしています。 ――6月4日の虫の日には、バッタを供養されるそうですね。では将来、殺虫剤を使わず、地球環境にも人間にもやさしく、バッタと人間が共存できるくらいの安定した数にする。それぞれが生きていける平和バッタになるように研究していくのでしょうか。 前野:そうなったらいいですね。さらに、サハラ砂漠という過酷な環境で生きていけるだけでもすごいのに、そこで大発生するこのバッタのすごさを私がひとつずつ発見して、それを論文で発表して、人類で共有していきたい。バッタのすごさを人類に伝えたいという想いがあります。 ――虫の面白さを多くの人に知ってもらいたいというお気持ちを感じます。バッタをほんとうにお好きなんですね。
バッタの婚活も、自分の婚活も楽しみつつ
――今後、どうしていきたいですか。 前野:自分自身の研究は続けていきますが、中高生向けに私の体験を伝えたいと思っています。今、私は研究所の研究員として働いているのですが、学生を教えるというシステムがありませんので、それを逆手にとって、中高生のところに出向き、話したいですね。 ――自分の仕事や転職で悩んでいる読者に、メッセージをお願いします。 前野:生き方を悩んでいる人は、他の人がその悩みをどうやって乗り越えたかという事例をたくさん知っておくといいと思います。何かきっかけがあると、進む道が見えてきます。 この本のなかにも就職先探しや無収入の時のことなどを書きましたが、サイン会の時などに、読者の方から「前野さんの本を読んで勇気づけられて、この道に進みました」と言っていただくことがあります。つらいときに読んでもらって、心に残ることが何かひとつでもあったとしたら、こんなにうれしいことはありません。 ――好きな道への後押しができたのですね! 前野:ええ、勇気を出す後押しですね。私がアフリカに行く姿を見て、「私も何かやってみよう」と一歩を踏み出すお役に立てたらと思います。 ――バッタの婚活は着々と研究が進まれていますが、ご自分の婚活はいかがですか。 前野:進展は一切しておりません。今44歳ですから、ピンチですね。私の場合は、つらいことがあったら、それをどうやって面白い話につなげていこうかと考えるんです。婚活でなかなかうまくいかず、「自分なんか」と落ち込むところですが、「さあ、これをどうやっておいしく料理して、人の心をつかみにいこうか」と。 それで人が笑ってくれればいい。そんなマインドを持っていると、使い方ひとつで、つらいこともうまくいくのではないかと思います。 ――きっといい方が見つかると思いますよ。せひご自身の婚活も成就し、バッタ愛をご家族で育んでいかれるようにお祈りしています。 インタビュー:高木香織
前野 ウルド 浩太郎、高木 香織