アメリカの港湾労使交渉、交渉きょう再開へ。ストを懸念、海運会社は早期のコンテナ搬出を要請
船社筋によると、米国東岸港湾労使は米国時間7日から、基本協約(マスターコントラクト)更改に向けた交渉を再開する見込みだという。しかし、現行基本協約の期限となる15日までには1週間程度しかなく、期限までに妥結するかは極めて不透明な情勢となった。船社はストライキ発生の可能性が増したと見ており、発生時の特別付加料金を設定するほか、荷主に対してコンテナの早期搬出を要請するなど、対策を進める。 米国東岸港湾の労働組合ILA(国際港湾労働者協会)と、使用者団体USMX(米国海運連合)の間の基本協約は昨年9月末に期限切れを迎えた。ILAは翌10月1日からストライキを実施したが、争点の一つだった賃金で、6年間で約61・5%という賃上げに暫定合意したことで、ストライキは3日で終了。基本協約を延長し、自動化などの残る争点について議論することとなった。 しかし、最大の争点である自動化・半自動化について、ILAは半自動化RMG(レール式トランスファークレーン)の導入拡大を拒否する声明を発表。対してUSMXは東岸・ガルフ港湾の拡張余地がない中、「生産性改善には最新技術の導入が必要」と反論するなど、自動化に関する両者の考え方の溝は深い。 基本協約の期限切れは、トランプ新政権発足の5日前となる。これまで企業寄りと目されてきたトランプ新大統領だが、昨年12月12日にはILA幹部と会談し、「(船社、港湾オペレーターなど)外国企業は(自動化ではなく)米国労働者をもっと雇用すべき」と、組合を支持する姿勢を見せた。海運関係者は、次期政権が組合側に立ったことで、組合のストライキ決行への意思が強まったと見ている。 ■スト対応チャージも デンマーク海運大手マースクは2024年末に顧客に対して通知した文書で「(1月)15日までに労使が合意に達しなければ、16日には東岸全域でストライキが行われる可能性がある。しかし、交渉に新たな進展はない」と説明。混乱軽減へ、東部・ガルフ港湾での実入りコンテナの早期搬出、空コンテナの早期返却を強く推奨した。 独ハパックロイドはストライキが発生した場合、20日付で作業中断サーチャージ(WDS)、作業中断目的地サーチャージ(WID)を導入する。WDS、WIDともに40フィート型当たり1700ドルで、WDSは欧州・アフリカ・中東、南米などから、WIDは日本を含む東アジアから、米東岸・ガルフ港湾向け輸入貨物が対象となる。すでに輸送途上の貨物には適用されない。 イスラエル船社ジムは10日から米国東岸・ガルフ港湾経由の全輸入貨物に、「ILAストライキサーチャージ」を導入する。40フィート型当たり1000ドルで、ストライキやスローダウンによる混乱が発生しない場合は適用しない。
日本海事新聞社