「資産所得倍増プラン」本年末に策定 岸田首相会見6月15日(全文1)
「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げ
今回の物価高による影響を受けやすい事業者の方に対する支援も強化しています。物価高による影響は地域によって異なります。今回の対策により地方創生臨時交付金を1兆円確保しました。この交付金を活用し、例えば私が訪問した山梨県では、生活困窮者への給付金をプッシュ型で行うとの話がありました。また別の地域では、自治体が運営する水道料金を引き下げ、水道光熱費全体として負担抑制に取り組もうとしています。国としてこうした取り組みを後押ししていきます。またこども食堂や、孤独・孤立などの問題に取り組むNPOといった多様な主体にも協力を求め、コロナ禍や物価高に苦しむ方をきめ細かくサポートしていきます。 岸田政権としては、物価、景気両面について今申し上げた電気代負担軽減策や食料価格高騰対策などのさまざまな対策に加え、最大限の警戒感を持って対応してまいります。このため、政府に「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げます。私が先頭に立って事業規模13兆円の総合緊急対策に続く切れ目のない対応として、補正予算で確保した5.5兆円の予備費の機動的な活用をはじめ、物価・景気両面の状況に応じた迅速かつ総合的な対策に取り組みます。断固として国民生活を守り抜く決意です。 持続的な賃上げも重要です。今年の春闘では、賃上げ率は現時点で2.09%という水準となり、ここ数年の賃上げ率低下が一気に反転上昇することとなりました。最低賃金も早急に1000円まで引き上げる方針であり、そのための環境整備に努めます。そして継続的な賃上げを可能とするような、持続的で包摂的な経済成長を実現するため、「新しい資本主義」を実現させていきます。
夏以降にGX実行会議を設置し、方策を具体化
第2に、その「新しい資本主義」の実行についてです。さまざまな社会課題を成長のエンジンに変え、持続可能で力強い成長を実現する。それが「新しい資本主義」です。その実現、それを実現するためには企業に眠る320兆円の現預金、個人の保有する1100兆円近い現預金をしっかりと分配、そして投資に回していくことが必要です。 新たな官民連携によって人への投資、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、グリーントランスフォーメーション・デジタルトランスフォーメーションへの投資の4本柱を進めるとともに、社会的起業への支援など、民が積極的に社会課題解決に役割を果たしてもらう経済社会をつくっていきます。人への投資については、引き続き賃金の引き上げに政策を総動員し、分配を強化するとともに、3年間で4000億円の施策パッケージを含め、教育訓練投資を充実するよう進めてまいります。また、NISA・iDeCo改革等の資産所得倍増については、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定します。 量子・AI・バイオ・医療分野について、国家戦略、国家目標を定め、官民が連携して科学技術投資の抜本的拡充を行います。本年をスタートアップ創出元年として、年末までに5カ年計画をまとめ、イノベーションの鍵となるスタートアップを5年で10倍増とします。 今後、10年間で150兆円の、グリーントランスフォーメーション投資を実現するため、夏以降にGX実行会議を設置し、規制と支援を一体的に行うことで、投資を促進する方策などを具体化していきます。デジタルインフラ整備、デジタル規制改革4万件など、わが国のデジタル化の着実な実行を進めていきます。これら新しい資本主義の実現のための行動計画について、秋以降、新しい資本主義実現会議の下で、進捗を管理してまいります。 最後に、新型コロナを乗り越え、平時に近い経済社会を取り戻すという観点から、2点申し上げます。1点目に、観光の国内需要の創出です。新型コロナの影響が長引く中、4月から順次、地域ブロックを対象とした観光事業喚起策を実施してきました。新規感染者数は全国的に減少傾向にありますが、地域によって感染状況に差があり、依然として警戒局面にあります。水際対策において、6月1日から入国者数の拡大、10日から観光目的の入国再開を行ったところであり、これらの影響を含め、6月中の感染状況を見極める必要があります。その上で感染状況の改善が確認できれば7月前半より、地域観光をよりいっそう強力に支援するため、地域観光事業支援について全国を対象とした観光需要喚起策を実施いたします。