なぜできた?「格安スマホ」/木暮太一のやさしいニュース解説
数年前までは、携帯本体にSIMカードがセットされていました。「この本体には、このSIMカードじゃなきゃダメ!」と携帯会社が決めていたんです。だから、当然料金体系も携帯会社が提示した「高いプラン」しかなかったのです。 でも、そこに変化が現れました。 総務省が携帯会社に「自由にSIMカードを選べるようにしなさい」と指示したのです。その結果、携帯本体をつくっているメーカーは、いろんなSIMカードに対応できる機種をつくり始めました。 「SIMカードを選べると、何がいいの?」 「安い回線」を使って通話をできるSIMカードを使えるようになり、安いプランを提供できるようになるんです。そこに目をつけて、「格安スマホ」を売り始めたのがイオンやビックカメラということです。 じつは、総務省の通達があってから、「SIMカード単体」と「SIMカードなし携帯」が別々に売られることはありました。しかし、あまり普及しませんでした。 「なんで?」 理由は、大きく分けて2つです。 1.なんか難しそう 2.番号が050になってしまう 「なるほど……」 でも、今回は、イオンやビックが既に携帯本体とSIMカードをセットにして、しかも090の番号が使えるようにして売り出しました。これがポイントです。 とはいえ、値段が安ければそれなりの覚悟が必要です。この格安スマホは、これまでのスマホより、安い分だけ質も落ちます。 「たとえば?」 たとえば、 1.本体機種は、旧型モデルだったり 2.通信速度やデータ量が制限されていたり、 3.通信がつながりにくかったり。 これらのデメリットを理解したうえで、買う必要がありそうですね。
「なるほどねぇ。でもこれをきっかけになって、大手3社も値下げするんじゃない?」 現段階では、すぐに値下げされることはなさそうです。各社とも「質が違うので、別モノ」と位置づけて、様子見をしているところだと思います。 イオンがこの格安スマホを発売した時、「予約段階で8000台がすぐに売り切れた! 消費者は格安スマホを求めている!」とニュースになりました。しかし、日本全体の携帯契約数は、1億3千万もあります。イオンの8000台はわずか「0.006%」にすぎません。 これでは、まだ大手は「安売り競争」には入りづらいでしょう。 ぼくら消費者としては、安い方が良いに決まっています。 今後、格安スマホの質が向上し、格安スマホ率が上がり、大手キャリアを脅かすくらいの存在に、ぜひなってほしいと思います。 --------------- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。