超巨大輸送機で「かくれんぼしよ♪」ほのぼの風景に軍用機ズラリの異様「軍用機公園」ができたワケ
廃棄するはずだった軍用機を引き取り公園に
台湾中部・彰化県。清朝時代には台湾第二の都市だった古都・鹿港を有する一方、彰化県全体を見渡せば、穏やかな印象を受けるのんびりとした空気が漂う地方です。なかでも渓湖というエリアは観光物件がほとんどなく、際立って静かな印象を受ける街ですが、この街の一角の公園に突如、ものものしい軍用機が姿を表します。 【ほのぼのしてるなぁ…】迫力だけはスゴイ「軍用機公園」(写真) その名は「渓湖軍機公園」。台湾を統治する中華民国の軍用機を集めた公園なのですが、ものものしい雰囲気とは裏腹に、公園内では小さな子どもたちが楽しそうに遊んだり、お年寄りや家族連れなどが緑の日陰の中でのんびりとくつろいだりしています。 なんともシュールな光景ですが、どうしてこの静かな街の公園に軍用機が並べられているのでしょうか。 あるとき、中華民国軍で古い軍用機の廃棄計画がありました。それを知った地元自治体の役人が「もったいない」「一般市民に、軍用機に触れさせてあげたい」と、廃棄予定だった古い軍用機を自治体で引き取り、この地に軍機公園を建設したのだそうです。 ここには、C-119輸送機、F-5E「中正」戦術戦闘機、F-100F「スーパーセイバー」戦闘爆撃機、RF-104G「スターゲイザー」戦術偵察機が設置されています。4機とはいえ、公園敷地内にデーンとそびえるその姿は精悍で、なかなかの威圧感があります。 しかし、地元の人たちは公園に設置された軍用機に、興味がないのか慣れてしまったのか、冒頭の通り全く緊張感なく、遊んだりくつろいだりしているというわけです。 他方、軍用機ファンの人の中には遠方からこの「渓湖軍機公園」を目指して訪れる人もいて、地元では唯一の観光物件的なものとしても知られています。2024年に筆者が訪れた際には、女性の日本人旅行者が1人で見学に来ており、軍用機ファンからの熱い視線を持つ公園であることも実感しました。
C-119輸送機の内部に入ってみた
「渓湖軍機公園」の正面入り口にデーンと設置され、最も強いインパクトを持つC-119輸送機は、来訪時にたまたまドアが開いており、中に入ってみました。 輸送機内部の左右の壁には、一列の簡素なベンチが並べられています。これに座って戦地へと向かう軍人たちの過酷ぶりを想像して言葉を失いますが、四方ガラス張りのコックピットもまた緊張感があります。 コックピットのガラスから見る空の向こうに、いつ何時敵の軍機がやってくるかもしれない恐怖の中で飛行する状況を想像すると、これもまたゾッとする思いを抱きました。 しかし、台湾は依然として中国大陸と緊張状態にあります。台湾人の多くの頭の片隅には「万一の有事」があることでしょう。そういったなか政府・中華民国軍の立場で考えれば、軍用機を自国民に触れさせることは広報的に良いようにも映ります。 彰化県の中心部には、また別の「C-119軍機公園」という場所が存在し、こちらにもC-119輸送機が設置されています。「渓湖軍機公園」「C-119軍機公園」という2つの軍用機公園があるのは台湾の中でも彰化県のみ。軍用機ファンの方はぜひ見学に行ってみてください。 「渓湖軍機公園」へのアクセスは彰化中心部から「6714」バスに乗り約35分。「金豊」バス停を降り、徒歩約10分ほどです。
松田義人(ライター・編集者)