「なぜ兄だけに遺産が?」「遺言書があったのに、どうなったの?」親介護してきた“弟の絶望” 「お前に全て渡す」遺言ひっくり返った衝撃顛末
「自筆証書遺言」は、自筆で書くこと、名前・日付を入れること、押印することなどの条件をクリアしていれば、自分で勝手に書くことができます。 対して「公正証書遺言」は、公証役場で公証人立ち会いのもとに遺言書が作成され、原本が公証役場に保管されます。 おすすめは断然「公正証書遺言」です。 「自筆証書遺言」は盗難や紛失、偽造のリスク、さらに遺言書の不備によって無効になるリスクがあります。 「公正証書遺言」であれば、本人の意思をしっかり確認したうえで専門家が作成するため安心ですし、盗難や紛失、偽造の心配もありません。
■揉め事になりやすい「自筆証書遺言」 今回のケースでは、どちらの遺言書も「自筆証書遺言」でした。 「自筆証書遺言」は、公正証書遺言のように第三者の立ち会いがないこともあって、内容が極端に傾きがちで 揉め事になりやすい のです。 とくに、Tさんの父親のように認知症を患っていた場合、文字を書くことはできても、判断力が十分であったか、その確証はありません。 「被相続人には判断力がなかったから遺言書は無効である」という裁判を起こすことも可能ですが、時間も費用もかかり、判決もどうなるかはわかりません。何より、兄弟の仲がさらに泥沼化することは必至です。
自筆証書遺言とともに、動画によるメッセージなどがあれば判断力があったというひとつの証拠にもなりますが、それでもやはり公正証書遺言のほうをおすすめします。 ②遺言書が複数ある場合、日付の新しいものが有効となる 遺言書が複数存在する場合、後に書いたものが有効です。 今回のように、2つの遺言書が存在し、矛盾する部分がある場合は、日付の新しいものが有効とされます。 自筆証書遺言であっても公正証書遺言であっても、関係ありません。公正証書遺言が優先されることもありません。
そのため、相続人にとっては「自分に渡すという遺言書があるから安心」というわけではないのです。 ■不公平な遺言書はおすすめできない 遺言は「故人の意思を尊重するためのもの」です。 『「おふたりさまの老後」は準備が10割』を執筆した「終活の専門家」として言わせていただくなら、相続をスムーズにするために、どなたにも遺言書を書くことをおすすめしています。 しかし、「不公平な遺言」はその後の人間関係に必ず禍根を残すことになるため、内容については十分に考えることが重要です。