「なぜ兄だけに遺産が?」「遺言書があったのに、どうなったの?」親介護してきた“弟の絶望” 「お前に全て渡す」遺言ひっくり返った衝撃顛末
無事葬儀も終わり、相続の手続きをはじめると、Tさんは驚愕の事実を知ることになります。 なんと、父親はTさんではなく「兄のKさんにすべての財産を渡す」という遺言書を残していたからです。 Tさんは驚きました。父親は「Tさんにすべての財産を渡す」と言っていたはずなのに……。 しかし、兄のKさんによれば「親父はしょっちゅう施設に見舞いに行った俺たちに感謝して、遺言書を書いてくれた」というのです。 なぜ、こんなことになったのでしょうか?
父親が施設に入ってから、Tさん夫妻は安心して会いに行く回数も減っていました。 施設の職員さんの話では、兄のKさんはTさんとは逆に、施設にしょっちゅう顔を出していたというのです。 兄のKさんと父親の間に、実際どんな会話があったのかはわかりません。 想像でしかありませんが、「弟(Tさん)にすべての遺産を渡す」という遺言書の存在が父親から兄の耳に入り、それに業を煮やした兄のKさんが、父親を言いくるめて新しく遺言書を書かせたのかもしれません。
お金がほしかったわけではありませんが、Tさんには無力感しか残りませんでした。 父の死を悼む気持ちにもなれず、兄とは「縁を切りたい」とまで考えるようになりました。 介護に尽くした2年間を思い出すと、父親に裏切られたような気持ちになり、なんともいえない虚しさに苛まれています。 ■財産の大半は「介護をしなかった兄」へ渡ることに ちなみに、実子には遺留分(最低限保証された遺産の取得分)があるため、財産のすべてが兄のKさんに渡るわけではありません。遺留分の侵害請求権を行使すれば、Cさんは4分の1の遺産をもらう権利があります。
しかし、父親の財産の大半が兄に渡ることには変わりません。 父親の遺産は4000万円ほどで、結果的に兄のKさんが約3000万円、Tさんが約1000万円を相続することになりました。 今回のケースのように、遺言によって深い禍根を残さないためにも、みなさんに知っておいてほしいことが2点あります。 ①遺言書は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がある 主な遺言書の種類として、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。