夢の扉 ‘25注目ルーキー 光る君へ ロッテD1位・西川史礁、故郷・和歌山の雄大な自然が育んだスラッガーの礎
プロ野球のルーキーにスポットを当てる連載「夢の扉」の第4回は、ロッテのドラフト1位・西川史礁(みしょう)外野手(21)=青学大=を取り上げる。即戦力の長距離砲として期待がかかる右打者は、故郷和歌山の雄大な自然の中でスラッガーの基礎を育んだ。二人三脚で練習に励んだ父の凌滋(りょうじ)さん(59)に、努力の日々を聞いた。(取材構成・加藤次郎) 豊かな水と緑にあふれる。182センチ、88キロの西川は、大自然が広がる人口約9000人の和歌山県日高川町で健やかに育った。活発な少年時代。父の凌滋さんがドラフト1位スラッガーの素顔を明かした。 「とにかく自然が大好き。根っからの〝田舎もん〟ですよ。(子供の頃に)実家のすぐ下の川に行ってウナギを釣っていました」 ゲームセンターでもなければ、児童館でもない。自宅下を流れる江川川が西川少年の〝遊び場〟だった。下流の日高川へと続く、のどかな川に潜むウナギを、来る日も来る日も追いかけていたという。 壮大な自然環境で養った運動神経も手伝い、幼少期から頭角を現した。チーム事情もあり、小学1年から4歳上の兄、藍畝(らんせ)さんらが主体の高学年チームでプレー。「小学1年生の史礁がレフトを守って、小学5年生の打球を普通にパッと捕っていた。スーパー1年生として地元では有名だった」。発育期の体力差をものともしなかったという。 紀州の雄大な大地で育まれた。中学時代、シーズンオフの恒例だったのがランニングと砂浜ダッシュ。和歌山県美浜町の練習グラウンド、若もの広場(第2)から紀伊日ノ御埼灯台までの往復約12キロ、標高差約200メートルの急斜面を走った。西川は当時を回顧し「(平らな道は)海の景色を見ながら楽しんでいたんですけど、坂は吐きそうになるぐらいきつかった」と苦笑い。砂浜ダッシュでは太平洋を一望する全長4・6キロの煙樹ケ浜の浜辺で足腰を鍛えた。 親子二人三脚で夢をつかんだ。中学まで野球をし、建設業を営む凌滋さんは自宅の庭に自作の打撃ケージを設営。「やるからには一生懸命、とことんやろう」と毎日欠かさず息子にボールを上げた。「甲子園のイメージを付けるため」と鹿児島から黒土を取り寄せ、夜間練習もできるように2500ワットの照明設備も完備。現在でもきれいに整備されている打撃ケージを見つめ「ここが史礁の打撃の原点ですね」と感慨深げに語った。西川も「あれがなかったら今の自分はない。自分たちのためにずっと球を投げてくれた。本当に感謝しています」と振り返る。 青学大2年の秋がプロ入りへのターニングポイントとなった。西川親子は非力さを痛感し、その後の飛躍へとつなげた。