「琴畑かぶ」給食献立に 奥州・遠野市の伝統野菜 高校生らの尽力で復活
岩手県遠野市に伝わる伝統野菜「琴畑かぶ」が21日、同市の学校給食に初めて登場した。琴畑かぶは、一時栽培が途絶えたものの、県立遠野緑峰高校の生徒らの尽力で復活。今回のメニューも同校生徒らが考案した。市立達曽部小学校には琴畑かぶの生産者や同校生らも招かれ、小学生と一緒に給食を味わった。 【画像】 笑顔で給食を食べる生徒と児童 この日給食に登場したのは「琴畑かぶしゃぶサラダ」。市内の農家、田中ナオ子さんが栽培した琴畑かぶ約37キロを、豚肉などと共にしょうゆやレモン果汁で味付けした。市内の小中学校15校で約1600食が提供された。 遠野伝統野菜研究会の高橋義明会長らと共に給食を食べた同小の児童らは「シャキっとしておいしい」「初めて食べた」と笑顔を見せた。6年の佐々木心羽さんは「普段食べる漬物のカブは苦手だけど、琴畑かぶはまた食べたい」と話した。 琴畑かぶは、自家採種する農家がいなくなり途絶えた。しかし約10年前、市内の種苗店が保存していた種子を元に同校の生徒らが増殖して復活させた。 給食への活用は、その後輩たちである生産技術科3年の佐藤光さん、小森暖栞さん、情報処理科の佐々木駿佑さんが発案。形がふぞろいのため、手作業の調理工程が多いという課題もあったが、伝統野菜の継承のため、市学校給食センターも協力した。 3人は、アレルギー対応など学校給食特有の制約に悩みながら、同センターと検討を重ねた。昨年、実習で琴畑かぶを栽培し、「しゃぶサラダ」のアイデアを出した佐藤さんは「小学生にも好評でホッとした」と話した。 事前に市内の小中学生を対象に行ったアンケートでは、琴畑かぶの知名度は5%程度と、市内で栽培される他の伝統野菜と比べても低かった。「これを機に広まってほしい」と願いを込めた。 (山口圭一)
<ことば> 琴畑かぶ
かつて市内の琴畑地区で栽培されていたカブ。日に当たる部分が鮮やかな赤紫色に変化する。凍っても食味が落ちない特性があり、寒さが厳しい遠野で重宝されてきた。現在は市内の農家3人が栽培している。
日本農業新聞