年収650万円を「東京都」に奪われた男性の言い分 何を答えても否定ありきのパワハラ面接だった
SCに限らず、非正規公務員の雇い止め問題を取材していると、その理由について自治体側はたいてい「市民の方々に広く仕事の機会を提供するため」「応募機会を公平に与えるため」と答える。定型文でもあるのか、と思うほど同じ答えが返ってくる。今回、都教委に話を聞いたときも案の定、「雇用機会の公平性確保のため。SCをやりたいという人たちにできるだけ多くの挑戦の機会を持ってもらうためです」と言われた。 しかし、「仕事の機会」を奪われた側の生活はどうなるのか。公務職場の非正規化は進んでおり、総務省によると2020年、地方公務員全体の29%が非正規だという。1年を通して恒常的に存在する業務を担っており、彼らがいなければ公共サービスは維持できない。同時にその収入で生計を立てている人も増えている。自治体自らが生活をかけた“椅子取りゲーム”を強いるかのような光景は、私には異様にしかみえない。
■「生活保護水準以下の暮らし」に トモアキさんのことに話を戻そう。トモアキさんは都内の有名私大の大学院を修了。大学で10年ほど専任講師などを務めた後、塾講師や都内の自治体のSCや専門相談員を経て、都のSCとして働き始めた。 年収は一見すると悪くなかったが、勤務時間の関係で厚生年金に入ることができなかった。このため、国民健康保険料や国民年金保険料などを差し引くと手取り額は450万円ほど。加えて身分も不安定なので、「女性と付き合っても、最後は経済的なことが原因でいまだに独り身です」。
一方で都のSCに就く前に勤務していた学校では、相談ケースの多さから、教師から「行列ができる相談所」と評されたこともあった。都のSCとしても、校長や教頭からの評価は極めて良好だった。退職の際は、教師や子どもたちから「東京都は見る目がない」「ぜひまた一緒に仕事をしたい」「先生がいなくなると困る」など多くの言葉をかけられたという。 しかし、雇い止め後、トモアキさんの暮らしは激変した。雇用保険にも入れなかったので失業給付もゼロ。あわただしく就職活動をした結果、4月からは別の自治体のSCや知能検査員、複数の大学の非常勤講師などの仕事を掛け持ちしているが、年収は半分以下となった。家賃8万円と私的年金「iDeCo(イデコ)」の積立金約4万円を捻出するのが精いっぱい。最近は数駅分を歩いて移動して電車代を節約しているという。