忘れられない咆哮 2024年ベストショット3選【中野義昌】
早朝から夕暮れまで神経を研ぎ澄ませ、一瞬を切り取ることに全てをかけるフォトグラファーたち。2024年シーズンも、ドラマが凝縮された数々の一枚がゴルフ界を彩った。GDOとともに国内外を渡り歩いたプロフェッショナルが選んだ今年の3枚。第1回は中野義昌カメラマン編。 【画像】<2023年>中野義昌カメラマン ベストショット3選
<日本オープン 最終日 今平周吾>
1980年代から90年代、「日本オープン」といえば毎年のように名勝負が繰り広げられ、その開催コースや優勝者、どんな試合だったか、記憶が数多く残っている。しかし、残念ながら2000年代に入ってからは、なぜか記憶に残っている試合がほとんどない。 最終日、私は最終組から1つ前をラウンドする今平周吾選手の18番セカンド地点にいた。最終組で優勝を争う木下稜介選手が17番(パー3)でバンカーからチップインバーディを決め、遠くのはずが地鳴りのような、とても近くに感じる大歓声が聞こえてきた。今平選手も思わず17番グリーン方向を振り向く。「木下選手の優勝を決定づける奇跡のチップインバーディを撮り逃した…」。もしも木下選手が優勝していたら、そう後悔していたかもしれない。 最終18番グリーンで、今度は今平選手が約20mのバーディパットを入れ返す。再びの奇跡。いつもはクールでおとなしい今平選手が、大きく吠えてこぶしを握った。「こんな試合があるのか…」と鳥肌が立った。久しぶりに記憶に残る、忘れられない日本オープンとなった。
<ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ 初日 上田桃子>
今年限りでツアーの第一線から退くことを表明した上田桃子選手。「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」初日、上田選手は14位タイとまずまずのスタートを切った。「念願のメジャー制覇あるかもな」なんて思ったものの、私にとってまさかこの写真がGDOで撮影する最後の一枚になるなんて想像もしていなかった。 優勝を飾る数多くの選手が存在する中で、初優勝に立ち会えることはそれほど多いことではない。長く第一線で活躍してきた上田選手において、私の中で一番記憶に残っているのは、地元・熊本県で2007年に初優勝したシーンである。初優勝のスピーチともなれば、どこか緊張感がある初々しい感じになりそうなものだが、勝ち気満々だった上田選手の優勝スピーチが衝撃的だったことを今でも鮮明に覚えている。
<フジサンケイクラシック 最終日 平田憲聖>
もはや短縮競技は「フジサンケイクラシック」名物なのか…。連日の大雨でコースは水没し、スタッフの方々も毎晩徹夜でコース復旧作業を続けた。競技は36ホールに短縮され、何とかギリギリで競技成立することはできた。 平田憲聖選手は土曜日までに36ホールのプレーを終えており、日曜日の最終日にコースで一度もクラブを振ることがないまま優勝を決めた。最終日にプレーが行われているにも関わらず、優勝者がプレーしている写真がない試合なんて、30年以上この仕事をしていて初めてだった。同じく36ホールに短縮された2011年大会と同様、いろいろな意味で記憶に刻まれた試合となった。