【ホラー漫画】「死んだ後も女の子が挨拶をやめない理由」が切ない……“人の怖さ”を痛感する悲劇に反響【作者に訊く】
猛烈な暑さが続く今年の夏。ウォーカープラスではそんな季節にぴったりのホラー漫画を特集。今回は、的野アンジさんが連載するホラー漫画「僕が死ぬだけの百物語」(小学館)の中から、第14夜「おはよう」(単行本第2巻収録)を、作者の的野さんのコメントとともに紹介する。 【本編を読む】ホラー漫画「おはよう」 ■死んでもなお挨拶運動を続けるクラスメイトの謎 「僕が死ぬだけの百物語」は、少年「ユウマ」が百物語を語るという形式で、毎話登場人物やシチュエーションの違う短編ホラーが描かれるオムニバス作品。「少年サンデーS(スーパー)」および「サンデーうぇぶり」で連載中(単行本最新8巻は2024年7月11日発売)で、「次にくるマンガ大賞 2023」のWebマンガ部門ノミネートや『このホラーがすごい! 2024年版』(宝島社)でも取り上げられるなど、ホラーファンの間では常に注目を集める一作だ。 「おはよう」は、とある学校の教室を舞台にした短編。毎朝教室で、登校してきたクラスメイトに“挨拶運動”としておはようと声をかけていた少女・金子さんの死から物語ははじまる。 主人公の少年はクラスで孤立していたものの、金子さんの「おはようございます!」の声に嬉しさを感じていた。それが理由なのか、金子さんが不慮の死を遂げてからもただ一人、生前と変わらず挨拶運動を続ける声が聞こえていたのだ。 だが、霊か幻覚か、少年だけに見える金子さんの様子が変わる一幕があった。それは担任教師が教室にやってくる時で、金子さんは何か言いたげな表情で担任の顔を凝視しており――、というストーリー。金子さんの死の理由に疑問を持った主人公と、最後の決断が、ホラーながらも切ない読後感を残す短編だ。 作者の的野アンジさんに話を訊くと、同作以前に短期連載したホラー漫画「穴の家」が好評だったことから、引き続きホラーを描くことになったという。ホラー漫画を描く以前は「“ホラー”はただただ恐ろしく、関わりたくないものでした」と振り返りながら、積極的に向き合うようになってからは、人の心をこんなにも揺さぶり、それでも思わず見てしまう力を持つホラーというものの魅力に気付かされました」と心境の変化を語る。 また、同話の肝となるのは死後も挨拶を続ける金子さんだが、彼女は幽霊然とした姿ではなく、生前と変わらぬ出で立ちのまま。ショッキングな描写による恐怖は抑えられた回だ。そうした直接的な恐怖が少ない話においては「話へ入り込みやすいように、なるべく身近なところや題材を選んでいます。直接的な絵がない場合でも、話の中になにか驚きがあるよう心がけています」という意識を教えてくれた。 一方、身の毛もよだつ怪物や残酷なシーンが多い話もあるのがオムニバスならではの魅力。百物語を語るという形の中で「全体的に偏りが出過ぎないように気をつけています」という的野さん。「オムニバスで誰かが語る形なので、語り手の趣味嗜好によって話の傾向が変わると思い、意識しています」とその狙いを明かした。 取材協力:的野アンジ