Z世代は自分の殻に閉じこもる? 彼らが「孤独」を好む理由とは
友情不況
それにしても「自分を見つめるために」ひとりでいると、本当にひとりぼっちになりかねない。そうなると人間関係があれよあれよという間に崩壊していく。自分にかまけすぎることで、自らを永久に孤立させてしまうのだ。孤独を望んだはずが孤独に苦しめられる。SNSの急速な普及が起きた時にもこうした現象が多少見られたものの、コロナ禍でこの傾向がさらに強まった。いまや米国では友達の数が減っていることを指す「友情不況」なる言葉さえある。 フランスの状況も芳しくない。フランス版いのちの電話とも言うべき、SOSアミティエによると、話し相手が誰もいない人が10人に1人いる。また、ほとんど常に孤独を感じているフランス人が22%もいる。これは2022年の数字で、2018年には13%だったことを考えるとかなり心配だ。年齢別に見ると18歳から24歳が28%で全年齢層を通じて一番高い。 「全体的に年齢問わず見られる傾向だが、青年層に関して特に心配な数字だ。この年代は本来ならば社会の規範や価値観を学び、社会性を伸ばす年頃のはずだ。ところがひとりでいることに安心感を覚え、逆に他人とつきあうことが苦手で不安でいっぱいだったりする」と『La Civilisation du cocon(原題訳:コクーン(繭)文明』(Arkhê刊)の著者であるヴァンサン・コクベールは懸念する。 自分の内面を重視する態度は友情の定義さえ変えかねない。イギリスの『デイズド』誌の記事の最近の記事によれば、良い友人とは、ポジティブなことにいつも付き合ってくれて、相手に何も求めない人のことらしい。
存在の軽さ。
「そうであっても、友情の根底には互いに助け合う気持ちがあるはず」とヴァンサン・コクベールは思案顔だ。社会で生きていくためには時に意見を交わし、時には対立や議論を経てお互いに納得し、妥協に至るものだ。なのに少しでも対立しそうな時は逃げ出して穴の中に隠れてしまうとしたらどうなのだろう? 人間は「共に生きる」ことが必要なのに、この世代はそれができるのだろうか。 判断を下すにはまだ早い、と臨床心理学者のジョアンナ・ロザンブリュムは考えている。「この世代がきちんと向き合えるかどうかを知るには、少なくとも30年はかかるだろう」 とりあえず人類学者のエリザベス・スーリエはこの世代が二進法的発想をしている点に注目している。「デジタル技術の発達のおかげでZ世代はand演算を実践できるようになった。すなわち"私は一人でいるandほかの人ともいる"というのがいまや可能なのだ。いずれにせよ、この世代はふわふわとしていて把握が難しい。いまの世界は、複数のシステム間の絶え間ない動きで成り立っている。そこで生きるための彼らなりの新しい在り方なのだろう」 SNSを使いこなす若い世代はすぐにフォローしてはすぐにブロックする。そのことを心配すべきだろうか。人類学者のエリザベス・スーリエは、これが、人生の意味を見失わせる原因のひとつではないかと考える。一方、臨床心理学者のジョアンナ・ロザンブリュムはもっと楽観的だ。「彼らの存在の軽さは、厳しい世界で生きるために順応した結果だ。彼らの帰属意識は薄いが、その分自由なのだ」と。自由をどう享受するのも自由だ。ポストコロナ時代に、人々は個々に、ある種の快楽主義に向かう傾向にある。 「明日がどうなるかわからないからこそ、私たちは楽しみたい」とオーギュスタン・ブグロは締めくくる。そう、時に孤独が快楽になる場合もある。 (1) 2022年の「孤独の日」にあたってIfopが孤独な人への支援団体であるアストレ協会の依頼で実施した調査による。
text : Caroline Hamelle (madame.lefigaro.fr)