「おいしい」って数字にできるの? 途方に暮れた研究者
(前回はこちら→「植物性で「肉を食った!」と思わせる素材を開発せよ」) 齋藤努・不二製油風味基材事業部長(以下、齋藤):結局のところ、植物性素材になくて、動物性にある「おいしさ」とは何か、これを解明せねばならない。そうすれば、動物性の素材が与えてくれる満足感を、植物性でも実現できる道が開ける。 【関連画像】植物性食品を食べたときの感想を教えてください(不二製油調査) ですが、「おいしさ」という概念は一筋縄ではいかない。だって「おいしさは、同じ食べ物でも誰と食べるかによって違うんだよ」と、普通に言われちゃいますからね。 情緒としてはその通りですけれど、研究者としては途方に暮れますね。 齋藤:そこで我々が見いだしたのが、「満足感」というキーワードなんです。 満足感。 齋藤:当初は皆さんに突っ込まれてなかなか通じなかったんですが、僕も様々な方々へプレゼンを繰り返すうちに、だんだん自分の中で腑(ふ)に落ちてきまして。 おっ、では、説明してみてください。「満足感」って何でしょう。おいしさとの違いは。 ●植物性素材は「おいしい」とは思ってもらえる 齋藤:はい、まずこちらを。プラントベースフード(植物性素材を使った食べ物、PBF)のアンケートです。 あれ? 「おいしい」の評価が高いですね。 齋藤:そうなんです。植物性ミートとか、植物性ミルクとか、植物性素材のスープや出汁(ダシ)に対して、それぞれ「おいしかった」という人がもうすでに半分近くもいらっしゃるんです。 ですが、「満足感があったか」という質問に対しては、「あった」という回答は2割に減っているんですね。 ということは。 齋藤:そうなんです。ということは、「おいしさ」と「満足感」は違う、ということになります。実際、我々が行っているユーザーインタビューでも「おいしいけれど、満足感がない、物足りない」という声はひんぱんに出てきていて、そこがブレイクスルーへの最初のとっかかりになりました。 おいしいけど満足感がない。なんとなく分かりますけれど、説明はしにくいですね。満足感は「満腹感」とは違いますよね? 齋藤:違います。量ではなくて、食べ応えとか、ガツンとくるとか、そういうやつですね。うまいラーメン、例えばとんこつラーメンを食べに行きたいと思って、店に入って、スープを一口飲んだときに感じる幸せな感覚ってありますよね。食べ始めたらまだ腹八分目でも「ああ~」とため息が出ますよね、ああいうことだと思います。 濁点付きの「あ」ですね(笑)。