[懐かし名車旧車] トヨタ初代カローラレビン/スプリンタートレノ(TE27型)【その走り、稲妻の如し】
ヤマハとのコラボが生んだ、当時世界でも稀だった量産型DOHCエンジン
今ではエコカーにも効率を求めてDOHCエンジンが当たり前に積まれているが、1970年代初頭のそれは、世界を見回しても特別なスポーツカーのメカニズムと言えた。そんな中で、大衆向けコンパクトカーのカローラにDOHCを積むという商品企画は、トヨタにしかできない荒技だった。 それを実現させたのは、1967年に登場したトヨタ2000GT以来の、ヤマハとのコラボレーションだ。 クラウン用の6気筒OHCを2000GTのためにDOHC化したヤマハは、その後もトヨタ1600GTやマークIIGSSなどで、トヨタの実用エンジンをDOHC化する関係を確立した。セリカに搭載された1.6Lの2T-G型DOHCも、カローラにも積まれたOHVのT型1.4Lをベースに、ヤマハが手際よくDOHC化したもの。トヨタとヤマハのコンビは、その時点でDOHCエンジンを量産する、世界でも希有な存在になった。 ベースとなったT型エンジンの素性の良さも忘れてはいけない。機構的には旧式のOHVだが、カムシャフトが可能な限りエンジン上方に置かれ、サイレントチェーンで駆動されるOHCに近い構造で、バルブを押すプッシュロッドを短くする工夫がされていた。吸気と排気をエンジンの左右に分けて配置した、クロスフローと呼ばれるレイアウトで、燃焼室形状もスポーツエンジンのような半球形を実現。プラグも燃焼室の中央に配置されるという、DOHCに近いデザインだったのだ。 おかげで、カローラクーペに搭載されたツインキャブのT型エンジンは、同クラスでは群を抜く95馬力を発生。足まわりも固め、大衆車クラスでは初となる5速MTを組み合わせた1400SRは、登場当初ラリーにそのまま出場できるクルマとして話題になった。 レビン/トレノはその心臓を、115馬力の2T-G型DOHCに換装。タイヤも1400SRの155SR13から、認可されたばかりの偏平タイヤ175/70SR13とし、迫力あるオーバーフェンダーも備えて登場したのだ。 グロスで115馬力のパワーも、175/70、しかも13インチというタイヤサイズも、現代の基準で見れば実用車レベル。しかし、当時のそれは驚天動地の高性能車であり、オプションでリミテッドスリップデフまで用意されるという本格的なスポーツ仕立ては、クルマ好きの度肝を抜いた。 81万3000円の価格は同クラスとしては高価だったが、その内容を思えば、世界で一番安いDOHCスポーツに違いなかった。 【カローラクーペレビン1600(1972年式)】●全長×全幅×全高:3945×1595×1335mm ●ホイールベース:2335mm ●トレッド(前/後):1270/1295mm ●車両重量:855kg ●乗車定員:5名 ●エンジン(2T-G型):直列4気筒DOHC1588cc ●キャブレター:三国ソレックス40PHH3型×2個 ●最高出力:115HP/6400rpm ●最大トルク:14.5kg-m/5200rpm ●最高速度:190km/h ●0-400m加速:16.3秒 ●最小回転半径:4.8m ●トランスミッション:前進5段/後進1段 ●サスペンション(前/後):ストラット式独立懸架/半楕円リーフリジッド ●タイヤ:175/70HR13 ◎新車当時価格:81万3000円 ◆SRの190km/hに対し、210km/hまで目盛りが増やされたスピードメーター。タコメーターも7000回転からがレッドゾーンになる。オプションのヒーターの上の3連メーターは左から油圧計/油温計/電流計。SRの部分強化ガラスと違い、ウインドウは合わせガラスを採用。 ◆金属バネを使用せず、ゴム板バネとウレタンをクッションとするエアホール付きのシート。前後調整は160ミリ、シートバックはフルリクライニングが可能。フロントシートベルトは3点式を採用、リヤにもシートベルトを備える。なお内装色はこのフルブラックだけだ。 ◆K型に変わるメインエンジンとして1970年にデビューしたT型。そのT型をボアアップし、動弁機構をOHVからDOHCへ、キャブレターをソレックス2連装に変更したのが2T-G。ハイオク仕様(115馬力)のほかピストンを変更して圧縮比を9.8から8.8にしたレギュラー仕様の2T-GR(110馬力)もあった。 ◆トップカウルに付く大型エアインテーク。面白いことに内部のグリルがレビンは縦スリット、トレノは横スリットとされる。ワイパーは高速での浮き上がりを防ぐ黒塗りのフィン付き。 ◆オーバーフェンダーはボディ同色のFRP製(1973年4月以降はスチール製)。レビンは175/70HR13。ちなみにレビン以外もラジアルタイヤはオプションで選べた。