[懐かし名車旧車] トヨタ初代カローラレビン/スプリンタートレノ(TE27型)【その走り、稲妻の如し】
憧れの存在から身近な1台へ、稲妻はたしかに進化しながら、人々の記憶だけに残った
そうして華々しくデビューしたカローラレビン/スプリンタートレノは、当然のようにモータースポーツで活躍する。とくに、コンパクトなボディと機敏なハンドリングは、ラリーでは無敵。1975年にはトヨタのWRCでの初優勝も飾り、その名を世界に轟かせる役割も果たした。その後もレビンは、カローラシリーズのイメージリーダーとして、歴代に設定されることになった。 1974年に登場した2代目のレビンは、翌年施行された排ガス規制をクリアできず、わずか1年でカタログ落ちするものの、1977年になると電子制御燃料噴射と触媒の組み合わせで復活している。ちなみに登場当時、レビンは2ドアハードトップ、トレノはクーペという異なるボディだったが、復活の際に当初のトレノと同じクーペボディとなり、マスクで差別化された。 初期の電子制御による2T-GE型エンジンはソレックスツインキャブ時代の鋭さを削がれたものの、排ガス対策技術の進化でもっとも厳しい53年規制をクリアした1978年以後は、ふたたびパワフルな走りを取り戻し、クリーンなエンジンでもスポーツカーは作れることを世界に印象づけた。 1979年に登場した4代目カローラの時代には、旧式のリーフリジッドのリヤサスがリンク式に改められ、よりシャープなハンドリングを手に入れた。クーペのレビン/トレノだけでなく、セダンやハードトップ、2ドアハッチバックに2T-G型エンジンが搭載され、そちらはGTを名乗って、高性能カローラは一気に普及する。 そのシャーシを受け継いで1983年に登場したレビン/トレノの真打ちが、今なお伝説的な人気を誇るAE86型だ。このクルマでデビューした新世代DOHCの4A-G型エンジンは、例によってヤマハの手で4バルブのヘッドが与えられ、高回転までカーンと回る、新たな魅力が与えられた。もっとも、このモデルからクーペ系のボディがすべてレビン/トレノを名乗るようになり、特別なクルマとしての存在感が薄れていったのも事実だ。 1987年デビューの6代目レビン/トレノからは駆動方式はFF。スーパーチャージャーで165馬力を絞り出すまでになったが、かつての熱狂は取り戻せなかった。走りは実用グレードでもTE27の時代よりはるかに進化したにもかかわらず、コンパクトなボディに高性能を秘めたレビン/トレノは、身近な存在になったがゆえに、本来の立ち位置を見失ってしまったのかもしれない。