イオン100品目を値下げ、携帯料金も価格競争 “値上げの秋”になぜ?【WBS】
10月に値上げされる食品の数は2911品目で、今年最多となっています。値上げの秋の一方で、流通大手イオンが発表したのはプライベートブランドの実質的な「値下げ」です。その他にも今「値下げ」へと動く企業が相次いでいます。 イオンのプライベートブランド「トップバリュ」。値段は据え置いたままで、焼鮭ほぐし身は20グラム増量、お好み焼き粉は50グラム増量しました。この実質的な値下げを数量限定で約100品目で行います。 イオンは今年3月から8月までの純利益が76.5%減りました。その巻き返しの一手として打ち出したのが、プライベートブランドの価格戦略です。 低価格を実現するため、従来個包装だったコーンポタージュは、11月中旬に販売されるものからチャック付きの大袋に変更し、コストを削減。従来より1杯あたりおよそ10円の値下げに成功したといいます。 さらにサラダ油は、輸送距離を最短にするため、製造拠点を全国各地に設置。物流の最適化でコストを削減します。 「しっかり利益をとっていくことはしている。客にしっかり支持をもらい、1個でも多く買ってもらう努力は『価格』が一番わかりやすい」(「イオントップバリュ」の森真紀取締役)
携帯料金で値下げ競争
牛丼チェーン3社は10月相次いで値引きキャンペーンを実施。きっかけとなったのは吉野家の100円値引きキャンペーンで、それに追随し、松屋が50円引きに、すき家が80円引きにしたのです。すでに3社のキャンペーンは終了しましたが、牛丼が300円台で食べることができる状態になっていました。 値下げ競争は携帯料金でも起きていました。 KDDIの低価格ブランド「UQモバイル」は現在データ量20ギガで月額3278円のところ、来月12日から、値段はそのままで33ギガまで使えるようになります。実質値下げの背景にあるのは、楽天モバイルの存在です。 楽天モバイルは去年始めた月額3278円でデータが無制限に使えるプランが人気を集めていて、21日には契約数が800万回線を突破したと発表。楽天モバイルの追い上げに、大手3社が相次いで新プランを投入したのです。 ドコモのオンライン手続きプランの「ahamo(アハモ)」は今月から月額2970円を据え置いたまま、データ量を10GB増量。ソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」は6カ月限定で20ギガを超えても、30ギガまでは値段を2970円で据え置くキャンペーンを開始しました。 携帯大手で再び始まった低価格競争。「KDDI」マーケティング本部の渡邊和也副本部長は「ドコモのahamoプランや楽天モバイルなどに負けないように、当社ならではの価格と価値、品質で客に選ばれるブランドになっていきたい」と話します。 その他にも、ホームセンターを運営するコメリは今月、IHクッキングヒーターなど759のアイテムを値下げ。家具大手イケアも10日から家具や雑貨など70点以上の値下げに踏み切りました。 相次いでいる値下げの動きについて、「第一生命経済研究所」星野卓也主席エコノミストは「所得が増えても、素直に消費に回さず貯蓄に回すところも足元では出てきている。値下げしてでも客を取りたいという企業の行動にもつながっていると思う」と話し、将来や老後への不安が消費に待ったをかけているといいます。 今後については? 「デフレに逆戻りというところまでは見ていないが、インフレの圧力は少しずつ抑えられていく可能性が高いとは思っていて、賃金が増えて消費が増える好循環に行きにくい構造が日本にはあると思う」(星野主席エコノミスト) ※ワールドビジネスサテライト