なぜ本田圭佑は『One Tokyo』監督にタレントの武井壮を起用したのか?賛否噴出も背景にあるメッセージを読み解く
武井氏の監督就任は問題ないと思われる一方で、本田自身はJFAが定めるライセンス制度へ、以前から疑問を投げかけていた。たとえば講習会の受講資格などが厳しく設定され、取得するまでに時間もかかる最上位の公認S級ライセンスへ、2017年7月のツイッターでこうつぶやいている。 <サッカーの指導ライセンスについて。指導テストなど別に必要ない。必要最低限のルールテストで合格すればS級を渡すべきで、その方が絶対にサッカー界にとって有益なんです。そもそも指導法に正解なんてないんですから。1人では何も変えられないので皆でルールを変えましょうよ。> ロシアワールドカップ後にフル代表を事実上引退。メルボルン・ビクトリーFC(オーストラリア)へ移籍すると同時にカンボジア代表の実質的な監督に就任し、1年あまりがたった昨年9月には、ライセンス制度に対して再びこんなツイートを投稿している。 <何度でも言いたい。プロの監督になるためのライセンスなんていらない。どう考えてもこの制度は本質からズレてる。プロの経営者になるのにライセンスが必要ですか?> そして、他のサロンメンバーと対等な立場で、本田も一票を投じたなかで武井氏が選ばれた。所信を表明した前出のツイートを引用しながら、本田は武井氏がもたらす新たな価値をこうツイートした。 <サッカー経験者じゃないけど、サッカーが好きな人にとっては大きな希望ですよね。これで成功したらJ1のクラブからオファー来たりして。> その際には<#ライセンスのことは知ってる><#だからルールを変えよう>と2つのハッシュタグも付記されている。ツイッターのユーザー間でライセンス制度への関心や話題を共有することが図られている点で、JFAに対する本田からの強烈なアンチテーゼにも映る。
東京都中央区を登録エリアとするOne Tokyoの代表者には、本田のビジネスパートナーを長く担ってきた鈴木良介氏が就任。さらにはツイッターに送られたダイレクトメッセージに共感し、実際に会った大学生の奥山大氏を運営責任者にすえた理由を、本田はブラジルへ発つ前にこう説明している。 「長文だったダイレクトメッセージの最初の3、4行だけ読んで、全部読もうと思えたのがスタートです。非常に面白い子だなと思って実際にお会いさせていただいて、このチームの運営スタイルにぴったりのキャラクターの持ち主だと思いました。自分のなかではほぼ即決でしたね」 トライアウトの合格者のなかには、フォワードとして挑戦した幻冬舎の編集者、箕輪厚介氏(34)が含まれていることを、箕輪氏自身がツイッターで明かしている。そして、奥山氏が就任後に立ち上げたオンラインサロンでの選挙で初代監督に選ばれた武井氏は、さらにこんなツイートを投稿している。 <まずなにから着手しようかひたすら考えよう。。選手には彼らの技術をさらに上積みできる身体の動かし方をまず伝えていこう。そしてチームをビッグクラブのような活動ができるようなビジョンと活動を提案していこう。さらに選手を有名にする手助けは誰よりもできるはずだ。。> 監督の人選などを含めて、既成概念を覆す挑戦を続けるOne Tokyoへ、インターネット上では当然ながら賛否両論が湧きあがっている。 図らずも注目を集める状況を楽しんでいるかのように、本田は日付が14日に変わった直後に、武井氏の2度目のツイートへ、地球の裏側から<No doubt.(確かに)>と短く、そして力強いメッセージを送っている。(ツイートはすべて原文のまま) (文責・藤江直人/スポーツライター)