柔道の阿部“兄妹”同日金メダル快挙に世界も驚嘆「ハリウッド映画でもあり得ない物語」
東京五輪の柔道男子66キロ級と女子52キロ級が25日、日本武道館で行われ阿部一二三(23、パーク24)と妹の阿部詩(21、日体大)が史上初の「夏季大会での兄妹金メダル」を達成した。米メディアも超異例のW金メダルに注目。「ハリウッド映画でもあり得ない物語だ」と称賛した。
「2人で最高に輝けた1日」
先に決勝の畳に上がったのは妹の阿部詩。相手は2019年グランドスラム大阪で、国際試合、唯一の黒星をつけられ、連勝記録を48でストップさせられて号泣した因縁の相手のアマンディーヌ・ブシャール(フランス)だ。6度対戦しているライバルにスピードとパワーで圧倒され、何度も奥襟をつかまれるが、阿部詩は、対抗しながらチャンスを待つ。試合はゴールデンスコア方式の延長戦にもつれ込んだが、ここで猛練習で築きあげたスタミナの差が出た。4分過ぎに、体力を消耗したブシャールが仕掛けてきた肩車を潰すと、右手を首に絡みつけたまま、ひっくり返して抑え込んだ。20秒。阿部詩は畳を何度も叩きながら泣いた。 その様子をウォーミングアップスペースのモニターで見ていたのが兄の阿部一二三だった。 「プレッシャーは感じない。逆に燃えた。いいパワーをもらった」という。 バジャ・マルグベラシビリ(ジョージア)は過去に4度対戦して一度も負けたことのない相手。パワーファイターだが、1分50秒に相手有利の組み手から、一瞬気を抜いたところで袖つり込みから大外刈りで倒した。この「技あり」を守り抜き、史上初の兄妹金メダルを成し遂げた。 だが、「いろいろ思うことがあった」と阿部一二三はガッツポーズも笑顔も見せず、礼儀正しく畳を降りてからやっと笑顔を見せた。 「2人で最高に輝けた1日。カッコ悪い兄ではいけない。僕も絶対に負けられないと思った。頼もしい妹だし、柔道家として尊敬する妹です」 兄がそう妹を称えると、妹も「小さな頃からの夢だったので最高です。私はまったくプレッシャーもなくずっと兄の背中を見て進んできた。最強の兄だなと思います」と笑った。 兄妹の五輪での同日W金メダルは史上初の出来事である。ただでさえ手にするのが至難の金メダルを、しかも、試合日程など、いくつもの偶然が重なった上で、2人で獲得することは奇跡に近い。 米国で五輪放映権を持つNBC局電子版は、奇跡的な快挙に「ハリウッド映画でもありえないような話だが、日本人の阿部詩と阿部一二三は、同じ日の五輪で金メダルを獲得した初の兄妹になった」と米メディアらしい表現で劇的な2つの金メダル獲得を伝えた。