敷金を取り戻すための4つのポイントを弁護士が解説 「原状回復ガイドライン」の活用法も詳しく紹介
――原状回復しなければならない場合でも、その費用を全額負担しなければならないのですか? いいえ、そうではありません。 設備は、新品の時から年月を経るごとに価値が下がっていきます。例えば壁紙であれば、6年も経てば残存価値1円になるといわれています。残存価値1円のものを交換するのに、何万円もの金額を支払って原状回復するのは、逆に大家さんが得をすることになってしまいます。 もちろん、壁紙そのものの値段だけではなく施工費等もありますので、借主が支払わなければならない金額が残存価値を上回る金額になることもあるのですが、少なくとも壁紙張替費用等の全額を支払わなければならないわけではないことは覚えておきましょう。
● 3.国交省の「ガイドライン」をおさえる
――どんなガイドラインですか? 借りる人にとってとても役立つものです。国土交通省が作った「お助けマニュアル」みたいなものだと思ってください。賃貸住宅を退去する時に、「誰が何を直すの?」「いくら払うの?」といった疑問に答えてくれます。 このガイドライン、どんなふうに役立つかというと、 ・「これって私が直す必要あるの?」といった判断する時の物差しになります。 ・大家さんと話し合う時に、「ここにこう書いてありますよ」と主張する根拠として使えます。 ・退去する前に、「どのくらいお金がかかるのか」の予想を立てるのに役立ちます。 ・契約時に「この約束はおかしくないか?」と思った時の参考になります。 どんなことがルールとして定められているか、ごく簡単に説明すると、 ・普通に使っていて自然に起こる傷み(通常損耗)は大家が負担する ・わざとだったり、乱暴に使ったりした結果起こした傷は借りた人が負担する ・物によっては、使った年数が長いほど借りた人の負担が減る ・契約で「これは借りた人が直すこと」と定めてあっても、借りる人に明確な説明がないと無効 ただし、これはあくまでガイドラインなので、法律のように絶対というわけではありません。ただ、裁判所でも参考にされることが多いので、知っておいて損はないですよ。 このガイドラインをうまく使えば、不当な請求から身を守ったり、公平な費用負担を実現できる可能性が高くなります。大家さんとのコミュニケーションもスムーズになって、トラブル防止にも役立ちます。