【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】角田選手は後半戦でさらにもう一歩、飛び抜けてほしい
■初優勝して大きく成長したノリスに期待 後半戦はマクラーレン、メルセデス、フェラーリの3チームが王者レッドブルに挑むという構図になると思いますが、打倒レッドブルの最有力候補はやっぱりマクラーレンでしょう。シーズン前半のマクラーレンは勝負所でチームの戦略ミスなどがあり、勝ち慣れしていないと言われていましたが、彼らはこれまでチャレンジャーという立場でした。 第6戦のマイアミGPでノリス選手がキャリア初優勝を飾ると、マクラーレンはチームとして優勝争いの常連になってきました。その後、第13戦のハンガリーGPではオスカー・ピアストリ選手も自身初の優勝を挙げるなど、ようやくレッドブルと互角に勝負できる立場になったともいえます。 それまではフェルスタッペン選手が先を走っていたので、マクラーレンはいかに表彰台争いに食い込むのかという戦い方をずっとしてきたわけです。それが今、ようやく勝つために、タイトルを獲得するためにどうするのかという戦い方に変わってきたところです。 マクラーレンが最後にタイトルを獲得したのは2008年です。当時デビュー2年目のルイス・ハミルトン選手がドライバーズ・チャンピオンに輝きましたが、それから10年以上もタイトルから遠ざかり優勝争いの経験がほとんどありません。 前半戦の戦いを通してマクラーレンは試行錯誤を繰り返し、いろいろと学習してきたはずなので、後半戦のレッドブル勢との対決は非常に楽しみです。特にノリス選手は前半戦、フェルスタッペン選手と何度も激しい優勝争いを演じましたが、さらにスリリングなバトルを見せてくれることを期待しています。
■伝説の世界王者の走りを再現するフェルスタッペン 後半戦はオランダGP(決勝8月25日)とイタリアGP(決勝9月1日)の2連戦でスタートします。フェルスタッペン選手は母国のオランダで3連勝中ですが、今年はマクラーレン、メルセデス、フェラーリの合計6人のドライバーがライバルとして立ちはだかります。母国GP、4連覇を達成するのは簡単ではないと思います。 ただレッドブルのマシンは決して遅いわけではありません。周りのチームが速くなり、シーズン序盤戦のような圧倒的なアドバンテージがなくなったのは確かです。しかもスイートスポットが非常に狭くて、神経質な挙動をするマシンになっていますが、優勝を狙えないというレベルではないと思います。 ただしフェルスタッペン選手がドライブしたときに限る、という状況ですが......。レッドブルはかなり特殊なマシンになっていて、ペレス選手が遅いというのではなく、フェルスタッペン選手だから乗りこなせているように見えます。 過去にも、乗りづらいマシンでも速いとか、マシンをポテンシャル以上に引き出してくるドライバーがいました。古い話ですが、1992年にホンダが撤退したあとに非力なフォード・エンジンを搭載したマクラーレンで何度も勝利したアイルトン・セナ選手(1993年)や、低迷するフェラーリに1996年に移籍して競争力の低いマシンで優勝したミハエル・シューマッハ選手などがそうでした。 なかなかそういうドライバーは出てきませんが、今シーズンのフェルスタッペン選手は過去の偉大なチャンピオンと同じレベルのドライビングをやってのけているんだと思います。とはいえ、ライバルのマクラーレンやメルセデスのドライバーはふたりそろって速いので、このままではレッドブルとフェルスタッペン選手はどんどん厳しい戦いになっていくはず。タイトル争いを盛り上げるためにも、ペレス選手には頑張ってほしい。