「ブランディングとパフォーマンスを区別するのは嫌いだ」。顧客とのつながりを重視する人気ジュエリーブランドのアプローチ
ジュエリーブランドのケンドラスコット(Kendra Scott)でCMOを務めるミシェル・ピーターソン氏は、ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングを区別することが嫌いだという。 「私のチームでパフォーマンス主導ではないマーケティングを行っている人などいやしない」と同氏は語る。 これは、ピーターソン氏がすべての意思決定において大切にしている重要な考え方である。同氏が2022年にケンドラスコットに入社したときには、2つの異なるチームがあった。「(2つチームがあって)もう片方のチームは一体何をしているのだろうと私は感じた」と同氏は話す。「そのような区別は好きではない」。
顧客とのつながりを重視するマーケティングアプローチ
ピーターソン氏は、米モダンリテールが4月15日から17日にニューオーリンズで開催したモダンリテールコマースサミット(Commerce Summit)に登壇した。そのセッションのなかで同氏は、コンバージョンよりも顧客とのつながりを重視するケンドラスコットのマーケティングアプローチについて言及した。 ピーターソン氏が統括するチームは、マーケティング、クリエイティブ、PR、カスタマーケアに加え、同社のeコマースチャネルも担当している。このようにさまざまな異なる部門があるが、共通の目標はただ1つであり、「我々は皆、全員がブランドエクスペリエンスに注力するブランドの構築者なのだ」と同氏は言う。 この注力のおかげで、ケンドラスコットは成長とともに顧客を維持している。米ニュースパブリッシャーのアクシオス(Axios)によると、同ブランドの昨年の収益は約5億ドル(約773億円)だったという。ピーターソン氏は、売上の70%は「当社の忠実な消費者からのものだ」と話した。
チャネルごとに異なるターゲットを想定
ピーターソン氏のマーケティング理論は、ケンドラスコットの各商品と各マーケティングチャネルのターゲット顧客を把握することに帰している。「我々はまず特定の消費者を想定して、その消費者とどのようにつながればいいかを考えることからはじめる。すべての会話は、消費者とは誰か、名前は何か、インサイトとは何なのか、そしてマーケティングモデルに移る前にこの消費者とどのようにつながるのかということに関するものだ」。 母の日を例に考えてみよう。ケンドラスコットは毎年恒例のプレゼントを贈るこの休日が近づくと、マーケティングチーム全員でブレインストーミングを実施し、ターゲットが誰かを正確に把握している。チームはそのターゲット消費者を「センチメンタルスーザン(Sentimental Susan、情にもろいスーザン)」と呼んでいる。 ピーターソン氏によると、母親たちは母の日に「母親であることからの解放を望んでいる」という大きな気づきがあったという。しかし同ブランドは、「実際には、母親はほかの母親と知り合い、サポートや共感を得られるコミュニティの一員になりたいと思っている」という理論を立てた。 そこでケンドラスコットは、母親たちを店舗に招待し、フォトブースを設置して写真を撮るというキャンペーンを企画した。 そこから、母親たちの写真を掲載したソーシャル、Eメール、さらにはビルボードなどを含むメディアプランを展開した。「母親同士という非常に限定された関係から、最終的にはこのキャンペーンを拡張することができる」とピーターソン氏は言う。 同ブランドが注視している架空の買い物客はセンチメンタルスーザンだけではない。たとえばミレニアル世代のユーザー層が中心のインスタグラムでは、チームが「エクスプレッシブエリー(Expressive Ellie、表現力豊かなエリー)」と呼ぶ女性に焦点を当てている。 「当ブランドには、各チャネルごとに考慮しているコア消費者がいる」。