よもやの会社名入りトラックで彼女とドライブデート。その時言われた意外なひと言とは?
自動車ジャーナリストのレジェンド岡崎宏司氏が綴る、人気エッセイ。日本のモータリゼーションの黎明期から、現在まで縦横無尽に語り尽くします。 岡崎宏司の「クルマ備忘録」 今回は筆者が奥様と出会った頃のお話。付き合い始めの彼女を連れて宇都宮で行われるオートバイレースを見に行くことに。しかし足になるクルマがない! ようやく調達したのは友人の家の会社名入りトラックでした……。
よれよれのダットサントラックでデート!?
このところ、家内との話がちょくちょく出るが、なにしろ、知り合ったのが1959年。65年もの付き合いになるので、あれこれ話のタネは出てくる。 今回は、知り合って間もない頃の話だ。僕はまだオートバイしか持っておらず、必要な時は家のクルマを使わせてもらっていた。 当時のわが家のクルマはダットサン1000(210型)。日産が、英国のオースチン社と技術提携して開発したC型エンジン(OHV 988cc 34ps)を積んだモデルだ。
この前の110型のエンジンはサイドバルブ 860ccで出力は25ps。シャシーも「トラック+α」といったレベルだった。 それに対して210型は、エンジンも軽快に回り、シャシー周りも進化し、性能も乗り心地も格段にレベルアップされていた。僕は結構気に入っていた。 でも、、彼女の家に乗って行くのは気が重かった。なにしろ、彼女の家のガレージには、シトロエン2CV、11CV、ビュイック 4ドアセダンが駐まっていたのだから、、。 なので、初めての時は、家から少し離れたところに駐めた。 そうしたら、彼女は、「どうして家まで乗ってこないの? ダットサン、いいじゃない。そんなことで恥ずかしがるなんて嫌いよ!」と、けっこう真剣に怒られた。 僕は怒られながら、うれしくなった。そして、以後は家の前に駐めるようになった。 たしか2度目の時か、、彼女の兄が出てきて、「おお、210ダットサンか。評判いいようだね。、、一回り運転させてもらっていいかな」と。 僕はもちろん「どうぞどうぞ、飛ばしていいですよ!」といって、キーを渡した。