よもやの会社名入りトラックで彼女とドライブデート。その時言われた意外なひと言とは?
車種はダットサン 220型。210型乗用車と同じ、OHV 988cc 34psのエンジンを積んでいた。乗り慣れたわが家のクルマのトラック版といったことだ。 だから、運転にはすぐ馴染むだろう。心配はない。性能だって、そう悪くないはずだ。乗り心地だけは、ちょっと心配だったが、、。 でも、それよりもなによりも、、会社名の入った薄汚れたトラックで迎えに行ったら、彼女はどう思うだろうか、、。 「こんなの嫌!」とは口には出さないまでも、楽しみにしているデートが台無しになってしまいはしないか、、それが心配だった。 彼女には「トラックで行く」とは言っていなかった。言えなかったのだ。もしも「嫌!」と言われたらどうしようか、、そればかり考えていた。 当然、彼女の家族に見られるのも嫌だったので、家から離れたところに駐め、歩いて迎えに行った。その時の気分はもう最悪だった。
ところが、トラックを前にした彼女の反応は、僕の想像していたものとは真逆だった。 「わぁ、これで行くの! 面白そう!」とニコニコ顔。そして、「これ、誰のトラックなの?」、、と。 で、説明すると、「〇〇君のお父さんの会社のトラックなのね。今度彼に会ったら、お礼言わなきゃ。なにか奢ってあげて」といった調子なのだ。 僕はホッとして、うれしくなった。家ではあんな贅沢なクルマに乗っているのに、これから長時間乗るよれよれのトラックを前にうれしそうにしている彼女を見て、なにかとても幸せな気持ちになった。 走り出しても彼女は楽しそうだったし、うれしそうだった。乗り慣れたわが家のダットサン210とは、エンジンやシャシをはじめ、いろいろ共通点があったので、なんとなく落ち着けたのかもしれない。 でも、そうはいってもやはりトラック。乗り心地は硬いし、けっこうガタピシくる。なのに嫌がるような素振りなどまるで見せない。 持ってきたトランジスタラジオでFENを聴きながら、「アメリカって、、トラックでデートする人たち多いんですってね、、」とか、ニコニコして言っている。