70歳の父は「失業保険」を一度も利用したことがないそうです。今まで支払った「保険料」は、利用しなかった場合に戻ってくるのでしょうか?
雇用保険料を長年払い続けてきたにもかかわらず、定年まで失業保険を受け取る機会はなかったという人は意外と多いのではないでしょうか。支払った保険料の総額を思うと「還付されればいいのに」と考える人も少なくないでしょう。 そこで本記事では、失業保険を受け取らなかった場合の雇用保険料は戻ってくるのかを解説するとともに、65歳以上の人が知っておきたい雇用保険の制度について紹介します。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
失業保険を全く使わなくても雇用保険料は返還されない
失業保険(失業給付)とは、雇用保険の被保険者が離職した場合、求職をすることなどを条件に失業中の生活の支援を目的に給付されるお金です。雇用保険は相互扶助のための制度であり、原則として保険料は掛け捨てです。定年退職などで失業保険を全く受け取ることなく資格を喪失しても、それまでに納めた雇用保険料は返還されません。 ただし、平成29年から雇用保険の適用範囲が拡大し、65歳以上の高年齢の人でも、以下の適用条件を満たせば「⾼年齢被保険者」として雇用保険に加入できるようになりました。 ●1週間の所定労働時間が20時間以上 ●31⽇以上の雇用見込みがある そのため、表題の人のように70歳を超えていても、継続して雇用保険に加入し続けることや、再就職などによって再び雇用保険に加入し、必要に応じて給付金を受け取ることは可能です。
失業保険の基本手当を受け取れるのは65歳未満
一般的に「失業保険」というと、雇用保険の給付金のうち、求職者給付の基本手当を指します。この基本手当を受け取れるのは、定年や倒産、解雇、契約期間の満了などの理由で離職し、再就職のために求職をしている65歳未満の人です。 表題の人を含めて、65歳を超えている人は雇用保険の被保険者にはなれますが、これから定年退職などで離職し、再就職を望んで求職活動をする場合でも、基本手当を受け取れないことに注意が必要です。
65歳以上の高年齢被保険者が離職後に求職するときは「高年齢求職者給付金」を受けられる
「雇用保険は掛け捨てである上に、65歳を超えると基本手当を受け取れない」という条件では、定年まで雇用保険に加入し続ける意味がないように思われるでしょう。しかし、65歳以上で雇用保険に加入している高年齢被保険者には、基本手当の代わりに「高年齢求職者給付金」を受け取る資格が得られます。 高年齢求職者給付金とは、雇用保険の高年齢被保険者が失業した場合に、次の条件を満たすと受け取れるお金です。 ●離職の日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上ある ●就職への積極的な意思といつでも就業できる能力があり、積極的な求職活動を行っているものの就職できない状態にある 仕事を辞めた後しばらくのんびりしようと考えている人や、健康状態に問題があって療養が必要な人などは、高年齢求職者給付の受給対象にはなりません。 高年齢求職者給付と基本手当の大きな違いは、前者は被保険者期間に応じた日数分の給付金が一括で支給される点です。賃金日額をもとに算出した基本手当日額が、被保険者期間が1年未満の場合は30日分、被保険者期間が1年以上の場合は50日分支給されます。 受給を希望する場合は、ハローワークで求職の申し込みをし、離職票を提出して手続きしましょう。