光を浴びる「高照度光療法」、うつ病患者の寛解率を向上
うつ病とも呼ばれる「大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)」は、心身を消耗させる疾患だ。世界では、成人のおよそ5%がこの障害に悩まされている。医師はたいてい抗うつ剤を処方するが、誰にでも有効というわけではなく、いくつかの副作用も生じ得る。 うつ病性の障害に効果的な、投薬以外の治療法として、高照度光療法がある。最新研究では、補助的に高照度光療法を受けた非季節性うつ病患者の寛解率が40%に上ったことが明らかになった。 精神医学ジャーナルのJAMA Psychiatryに2024年10月2日付けで発表された研究論文には、次のように書かれている。「高照度光療法を、補助的療法として取り入れることを支持する第一の論拠はコストだ。抗うつ剤を使った場合の外来治療費はまちまちだが、外部光を照射する治療法は、一般的に無料か、限度がある。これにより、非季節性うつ病患者に対する効果的な補助的治療法として、高照度光療法を利用する必要性が裏付けられる」 これまでの研究で、明るい光を浴びると、気分や認知機能に影響がある可能性が示されている。この研究チームによれば、そうしたことが起きるのは、網膜の内面(網膜神経節細胞という神経細胞が存在する)に、明るい光が入った場合だという。光が入るとそれらの神経細胞は、視覚情報を網膜から脳へと伝達するが、同時に、気分を調整する脳機能にも作用する。これは、それらの神経細胞が、とりわけ、扁桃体や視交叉上核、縫線核など、気分調整をつかさどる脳の部位に視覚情報を伝達するからだ。 高照度光療法が非季節性うつ病の治療に役立つかについて詳しく調べるために、研究チームは、複数の既存研究のデータを分析した(これらの研究には、うつ病と診断された患者が合計で858人が含まれていた)。 研究参加者は、ライトボックスと呼ばれる高照度光療法装置(1万ルクスの非常に明るい白色光を照射する蛍光灯)の前に毎日30分以上、座るよう指示された。その結果、「高照度光療法を受けた患者の寛解率は、受けていない対照群の寛解率を有意に上回った」と研究チームは述べている。 「この研究結果は、高照度光療法が非季節性うつ病に対する補助的治療法として効果的だったことを示唆している。初期治療による奏功期間は、高照度光療法を追加することで改善できる可能性がある」 「我々の研究結果は、より長期的な追跡を行う無作為化臨床試験の必要性を強調するものではないが、高照度光療法を受ける患者は、抗うつ剤のみの治療を受ける患者と比べて、より速やかに奏効が得られ、症状の寛解も得られやすくなるという説をいっそう有力にするものだ」と論文著者は続けている。