「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
「エンタメを俯瞰して見ちゃう」という人、本当は俯瞰してないし感受性が衰えてるんでもない説
天野 昨日、Z世代のうちの内定者の子と箕輪さんに取材したんです。その子が「世の中を俯瞰しちゃって、仕事とかにも熱狂できない気がする」って言っていて、箕輪さんも「めちゃくちゃわかる」と。 僕も、いろんなエンタメを偉そうに俯瞰的に見てて「なんか乗れないんだよな~」とか言ってて。 佐渡島さんは、その俯瞰力と熱狂が相反していないと思うんです。なぜそれができるんですか? 佐渡島さん 本来的には、(俯瞰する)鳥の目って、上から見ていてヒューッと下りてきて虫をつかんで戻るわけじゃないですか。俯瞰してるようだけど、細かい解像度で小さな虫が見えている。箕輪さんはもちろん世の中を解像度高く見てる人だけど… 「俯瞰してるから冷めてて何も見られない」っていう人は…本当には大して俯瞰してないんだと思いますよ。 天野 !!!! 佐渡島さん 俯瞰しているふうな他人の意見を採用しているだけだと思いますね。 安全地帯にいるだけ。 天野 安全地帯というのは…? 佐渡島さん 自分の心が傷つかない場所ってこと。 「失敗した」とか「悔しい」とか、思わないような思考をしてるだけ。 天野 「俺は分かってるからな」とか言って、斜に構えてるだけ…? 佐渡島さん うん(笑)。俯瞰しているというより、壁を作ってるだけ。 壁を作ってコンテンツや物事に接するのは、ある種、思春期的ですよね。 親とかに対して壁を作るじゃないですか。「俺の心を触るな!」って(笑)。 天野 ああ~~。 じゃあ「大人になって感受性が鈍くなった」と思ってたけど、むしろまだ幼さがあるっていう… 佐渡島さん そうそう。そう思います。 天野 自分の心の形に向き合ってないだけ。 佐渡島さん 昔は、会社に入ると先輩にイジってもらって、その壁を壊してもらうことがよくあったんです。 「お前はどんなやつなんだよ」みたいなね。今そういうこと、なかなか言えないけど… 天野 だとしたら、自分の心の形に向き合うことが以前より難しくなってますよね。 佐渡島さん ただ、それを会社が担うことが必要だったの?っていう話もあるから。 今は、そのかわりにAIが存在していると思う。 昔だったら、それぞれのジャンルの詳しい先輩に進むべき道を教えてもらってたのが、Amazonで自分がハマるものを精度高くレコメンドしてもらえる。 天野 そこがAIなのか…なるほど… …ということで、「トレンドのエンタメ作品にノれない」という悩みを相談したら、“必要なのは自分の心に向き合うこと”という結論が出ました。 よく「視点の高さが違う」という言葉を聞くことがありますが、取材しながら、自分と佐渡島さんの視点および解像度の違いをヒシヒシと感じました…。 自分は今どんな作品が見たくて、どんなマンガが読みたいんだろう。 皆さんはどうですか? 〈取材・編集=天野俊吉/文=吉河未布/編集協力=鳥山可南子〉