「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
佐渡島さんが振り返る“ある後悔”。自分の受容のセンサーを知れ
―――――――――― 天野 佐渡島さん、「エンタメの受容の仕方」についてぜひご意見を聞かせてください。 最近、エンタメ作品に純粋に没頭できないというか、楽しみ切れない自分がいて… 佐渡島さん うん…僕はね、 自分が読みたいものを読んでます。 天野 あ~。なるほど。 佐渡島さん 自分が何を読みたいかを考えて、それをつくった人は何を見てつくったのかを調べて、同じものを見て…ってやってると、その連鎖。ずっと何かを読んでることになりますね(笑)。 天野 いったん音楽の話になるんですけど… おじさんがよく「最近の音楽って全部似てる」とか言うじゃないですか。佐渡島さんはそういう感覚ってあります? 佐渡島さん うんうん。俳優とかもありますよね。みんな同じ顔に見える(笑)。 ただ、僕は10代のときも20代のときも、マンガでも音楽でも「人気上位のヒット作品って、同じようなものばっかりだな」と思ってました。 その年のベスト10だとしても、将来ひとつも残らない可能性がある。“みんな同じ顔つきだな”と思うものは、その時代では流行っても、やっぱり消えていく。 そう考えると、真剣に眺めなくていい気がするんですよ。 天野 なるほど… 佐渡島さん いまだに思い出すのが、編集者になって2、3年目のときに、渋谷駅で流しで歌ってた男の人のこと。 その人の前を通ったときに、「うわ、うまいな…」と思ったんだけど、通り過ぎちゃって。 その後、どんな路上ライブを見てもその感動を超えなかった。 あの夜、なんで戻って声をかけられなかったんだろう?って、今でも心に残ってるんです。 天野 自分の琴線に触れたときに、ちゃんと敏感に… 佐渡島さん 動ききれなかったな、と。 だから今はインスタでもTikTokでも見てて「いいな」と思う人がいたら、会いに行って話してみて、いつか人生が交差するときがあれば、と思って生きてます。 天野 つまり、トレンドの作品を見なくては…ってことじゃなくて、“自分が何かを感じるか”こそが重要だと。 佐渡島さん 自分の受容体の“形”を知ることが重要。どういうものが自分の心のなかにストンって入り込むのか。自分全体がセンサーなんですよ。 ただ… ほとんどの人は自分が何を好きかをわかってないんですよね。 たとえば、受験勉強もそうで、机に座って「今日は何が勉強したいかな?」って考えられる人っていない。 天野 参考書とか、決まったことをやりますね。 佐渡島さん つまり、大半の人は自分のセンサーを動かさず、決められた枠のなかへ自らハマりにいっている。 天野さんは渋谷に出勤しているわけだけど、“渋谷で最も好きな喫茶店の最も好きなイス”が答えられますか? 天野 …答えられない…かも。 佐渡島さん 「渋谷で、最も落ち着く喫茶店の、落ち着く角度を知ろう」ということと、「自分の最も好きなコンテンツを知ろう」とすることは、限りなくイコールな挑戦。 もっと、決められた枠ではない“自分のセンサー”に敏感になったほうがいいと思うね。