退職シニアが中小企業の支援者に 得意分野生かして知恵発揮 100歳時代の歩き方
中小企業の抱える課題を、退職したシニアが「マネジメントメンター」として伴走支援する制度が人気を呼んでいる。シニアは現役時代に培った高度な実務ノウハウを中小企業の課題解決や気づきに生かすことができ、中小企業は自社にはない知恵と経験を学ぶことができる。シニアと中小企業の双方を生かす方法として注目を集めている。 ■ノウハウ不足解消 埼玉県川口市のマンション修繕会社「セラフ榎本」は5年前、ドローンを活用した外壁調査を導入し、10億~15億円だった売上高が約50億円に急増した。ドローン導入に大きな力を発揮したのが、マネジメントメンターの近藤茂雄さん(68)だ。 セラフ榎本は従業員約100人。2代目の榎本修社長(58)は当時、外壁調査にドローンを使えないかと思案していた。従来のゴンドラを設置した打診調査に比べ、経費や人員、調査期間を削減できるとにらんだからだ。しかし、事業化へのノウハウが不足し、アイデア止まり。そんなとき、青木信用金庫(埼玉県川口市)が開催した交流会で近藤さんと知り合った。 近藤さんは、60歳定年の半年ほど前に電機大手の日立製作所を退職。ずっと情報通信部門の担当部長としてプロジェクト管理を担ってきた。自らプロジェクトマネジャーも務めるなど、事業計画遂行のプロだ。 榎本社長が近藤さんを指名した決め手は人柄だ。「高圧的で上から目線の人もいた」というなか、「先生(近藤さん)は『一緒にやろう』と言ってくれた。この人だと思った」と榎本社長は振り返る。 今も榎本社長は「私に意見する社員はいないのでメンターの存在は大きい」と、新規プロジェクトのたびに近藤さんの意見を聞く。業務委託料は現在1時間1万円。「大手のコンサルなどに頼むと、ものすごい金額になる。その点でもありがたい」(榎本社長)。当初は月2回で1回当たり3時間という契約だったが、今はケース・バイ・ケースだ。近藤さんも「可能な限り、多くの中小企業を支援したい」と意欲を見せる。 ■経営者との交流会