退職シニアが中小企業の支援者に 得意分野生かして知恵発揮 100歳時代の歩き方
マネジメントメンターは経済産業省が始めた制度で、現在は関東経済産業局(さいたま市中央区)が導入している。管内1都10県の中小企業をシニアの知恵で活性化させる目的だ。
関東経産局は地域金融機関などと連携し、中小企業の経営者とメンターとの交流会を開催。その後の面談で経営課題や解決方法がうまく合えば、マッチング成立となる。両者の間で業務委託契約や顧問契約などを結び、支援が始まる。
横浜市に住む楠田清敏さん(67)もマネジメントメンターだ。ハウス食品で飲料担当のブランドマネジャーとして、ミネラルウオーター市場の創出に一役買った実績を持つ。
マネジメントを担当したのは紙卸「相馬」(東京都江東区)だ。業者相手に商売していた相馬には、「紙を使った消費者向けの自社商品を持つ」という希望があった。楠田さんは紙卸ならではの強みに着目。従来の炭酸カルシウムと少しの紙ではなく、紙100%を原料とした「ホントの紙ねんど」の開発につなげた。差別化に成功し、令和2年、日本文具大賞の機能部門でグランプリを受賞した。
楠田さんは「長く仕事をしていれば、多くの人は自分の得意分野を持っている。これをメンターとして実践すればいい」と話している。
■663人が登録、平均67.8歳
関東経済産業局が運営するマネジメントメンター制度には10月末で663人が登録している。平均年齢は67.8歳で、最高齢は88歳。製造業出身者が最も多く、従業員2000人を超える大企業にいたメンターが約7割を占める。経営企画やマーケティング、製品開発などの経験を持つメンターが多い。
登録要件は企業を退職した人、または近く退職を予定している人。1つの専門分野で10年程度の経験があり、登録時の年齢が50歳以上の人。平成23~令和5年度までで交流会は269回開かれ、延べ約1万7000人のメンターが参加した。交流会を経て支援開始に至ったマッチング率は56%。関東経産局の石原優産業人材政策課長は「困りごとを抱える中小企業は多い。元気な退職者はどんどん登録してほしい」と呼びかけている。(佐藤克史)