こだわりの大学図書館の椅子 ソファにリラックスチェアから、世界の名品まで
現在の大学図書館は、調べものや自習だけでなく、グループワーク用のスペースが設けられるなど、多様な学びの拠点となりつつあります。各大学が学生にとって居心地の良い図書館づくりに注力しているなか、重要な要素のひとつになっているものが「椅子」です。座りやすい優れた椅子を集めて、長時間過ごしたくなるような空間づくりをしています。デザインにも目配りし、さまざまなシチュエーションに合わせて多彩な種類を導入する大学も見られます。そのこだわりに注目してみました。 【写真】近代椅子コレクションのギャラリー。実際に座って読書できる(写真=武蔵野美術大学提供)
多彩なデザインで、気分を切り替え
勉強に集中したり、グループワークで活発に討論したり、そして合間には息抜きも――。学生が多様な時間を過ごす大学図書館では、各スペースの用途に合わせた椅子がそろえられています。 工学院大学の八王子キャンパス(東京都八王子市)にある学術情報センター工手の泉 八王子ライブラリは、建築学部の塩見一郎教授と、2016年に同大を退職した飯島直樹氏がインテリアデザインを担当。エリアごとのコンセプトに沿って、色も形もさまざまな約20種類の椅子が配置されています。例えば、勉強や議論を行うスペースには白や黒のカラーで直線的な椅子を、くつろぎの場であるラウンジにはソファやロッキングチェア、おしゃれなデザイナーズチェアなどを置いています。これらの椅子はインテリアとしての役割だけでなく、学生たちが実際に優れたデザインに触れる機会を提供するという、教育的な意義も持っています。 ラウンジ内でひときわ目を引くのが、天井からつるされたオブジェのようなリング状の物体ですが、これも実は椅子です。リングの内側に腰かけて、ゆらゆらとスイングできます。デザインも座り心地も異なる個性豊かな椅子が、学生たちのONとOFFの切り替えに一役買っています。 美術大学ならではの「アート」色の強い椅子を配置しているのは、武蔵野美術大学です。鷹の台キャンパス(東京都小平市)にある図書館の各所には、近代デザイン史に名を残すような椅子が10脚ほど置かれ、学生が自由に座って読書できます。もともと同大学ではデザイン教育の教材として数々のモダンチェアをコレクションしており、実際に座ることができるように館内に設置しています。赤・青のカラーと幾何学的なデザインが印象的な「レッド アンド ブルー」や、半球体の内側をくりぬいたような形状の「グローブ」など、デザインの教科書で目にするような世界の名品です。上質なデザインの「美」と「用」を身近に体験できる、美大生にとって貴重な環境となっています。