こだわりの大学図書館の椅子 ソファにリラックスチェアから、世界の名品まで
学生の要望で、デザイナーの椅子を
2023年4月に図書館をリニューアルオープンした学習院大学(東京都豊島区)も、学生が利用する2階から7階までのフロアのそれぞれの性格に合わせて、こだわりの椅子をそろえています。図書館のコンセプトは「目白の<知>の杜」。JR山手線・目白駅からすぐという都心に位置しながら、樹木が豊かに生い茂るキャンパスに図書館はあります。大学図書館情報サービス課の遠山有紀さんは、「この図書館は、周囲の自然を感じられる空間を目指して建てられました」と話します。 図書館のリニューアルに当たっては家具を選定するチームをつくり、最終的に国内外から30種類以上の椅子を集めました。 「図書館の職員の多くは女性なので、他部署の男性職員にも声をかけて、体格の異なる人の目線からも座り心地を確認してもらいました。また、学生の意見を採り入れようとアンケートを実施し、『どんな家具があったらいいですか』と尋ねたところ、『マルニ木工のHIROSHIMA』と具体的に答えてくれた学生がいて、注目しました」(遠山さん) マルニ木工は日本の木製家具メーカーで、創業の地名を冠したアームチェア「HIROSHIMA」は、著名なプロダクトデザイナー・深澤直人氏がデザインし、背からアームにかけての緩やかな曲線が特徴です。図書館職員がショールームを訪ねて実物を確認し、採用を決めました。その過程でマルニ木工の製品が図書館のコンセプトに合致することから、HIROSHIMA以外の椅子やテーブルも取り入れることにしました。
フロアごとに個性豊かな椅子をセレクト
HIROSHIMAは、図書館のエントランスがある2階に閲覧用の席として置かれています。そばにあるラウンジには1人掛けの椅子や大型のソファがゆったりと配置され、雑誌などを読んでくつろげる空間となっています。 同じく2階にある英語の多読コーナーには、高さの異なる数種類のテーブルと椅子が置かれ、好みの場所で読書できます。 図書館の休館日にも利用できる自習室には、長時間座っても疲れにくい安定感のある椅子がセレクトされています。 4階は、アクティブラーニングのためのフロアです。ミニセミナーなどが開かれるワークショップエリアのほか、モニターや電子ホワイトボードを備えたグループ学習室、少人数での使用を想定したオープンスペースもあります。 「学生へのアンケートでは図書館の使い方についても尋ねましたが、2~3人で学習するスタイルが多いことがわかり、それに対応したスペースも設けました。4階にあるテーブルと椅子は可動式で、学生たちが使いやすいよう自由に配置できます」(遠山さん) 背の高い書架が並ぶ5階は、「本のジャングルのようなフロアなので、中央に植物を配置して『オアシス』を作りました」(遠山さん)。植物を囲む円形のカウンターにハイチェアを合わせて、カフェのような空間を創出しました。 6階には書架と閲覧スペースがあります。テーブルは辞書類などの大型資料も開ける広々としたもので、他のテーブルより5センチ高くすることで車椅子に座った学生がそのまま利用できるようにしました。5階と6階の窓際には、1人掛けのリラックスチェアもあり、座ってみると、腰と背をすっぽり包まれて心地よく、ヘッドレストが周囲の音を程よく遮断してくれるので読書に集中できそうです。 そして個人用の学習席が並ぶ7階には、勉強の合間に利用できるリフレッシュコーナーが設けられています。ソファや1人掛けの椅子に座りながら、自動販売機で購入した軽食を食べてほっと一息つけるスペースです。 図書館のリニューアル後には利用者が増えて、一日平均千人を超しています。学生たちにとって、図書館がより身近な場所になったと言えるのではないでしょうか。お気に入りの椅子を見つけるも良し、その日の気分や目的に合わせて座る椅子を変えても良し――。図書館で過ごす時間を快適にしてくれる椅子と出合えれば、学生生活も充実したものになるかもしれません。 (文=柿崎明子、写真=今村拓馬)
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