大型案件の獲得に欠かせない「BANT情報」と2つの「例外レビューポイント」とは?
(1)価値訴求(L1、L2、L3) 価値訴求を、顧客課題の深さに応じて3つのレベルに分けて考えてみましょう。重要なのは、それぞれのレベルにおいて何を明確化していくかです。 【レベル1:顧客の具体的な課題】 まずは、顧客が抱える具体的な課題を明確化します。例えば、「レポート作成に時間がかかる」「営業マネージャーが手作業で売上を入力している」といった現状を把握します。 【レベル2:課題解決によるインパクト】 レベル1で明確化した課題を解決することで、顧客にどのようなポジティブな変化がもたらされるのかを具体的に示します。 例えば、「レポート作成時間を削減し、空いた時間で新規顧客ニーズの発掘に注力できる」「自動化によって人的ミスをなくし、正確な数値を確保できる」といった具合です。 【レベル3:定量化された導入効果】 レベル2で示したインパクトを、具体的な数値で示します。ここが、価値訴求をより強力なものにするためのポイントです。 例えば、「レポート作成時間を30%削減し、新規顧客獲得に充てる時間を20%増加」「正確な数値に基づく施策立案により、新規施策の売上を10%向上」といった具体的な数字を提示します。 レベル2までは、普段の営業活動の中でも自然と意識されていることが多いでしょう。しかし、大型案件を成功させるためには、レベル3の「定量化」が不可欠です。「他社ならこうなる」という一般的な数字ではなく、「御社の場合、導入によってこれだけの効果が見込める」という、具体的な根拠に基づいた数字を提示することで、顧客の心を大きく動かすことができるはずです。 顧客は「他社」ではなく「自社」における導入効果を期待しているため、具体的な数値を示すことが重要です。では、その数値をどのように算出すれば良いのでしょうか?
ポイントは、初期導入から共に歩んできた社内チャンピオン(顧客側のサービス導入推進の協力者)と連携することです。第1回記事でも述べたLand&Expand戦略(小さく導入し、その後に収益を拡大していく戦略)を採用しているのであれば、既に小規模導入している部門が存在するはずです。多くの場合、その部門での成功体験を基に、大規模案件へと発展していくため、まずはその部門における Quick Win(初期段階における成功実績)を数値化していくと良いでしょう。 もし、チャンピオンが大型商談の社内稟議を通す難しさを経験する前の段階であれば、営業担当者からレベル3の数値化の必要性を積極的に訴求していくべきです。 具体的には、「競合製品を推す役員への反論材料」「購買部からの価格交渉への対応」など、チャンピオンが稟議を上げていく中で直面するであろう課題に対して、具体的な数値を用いながら解決策を提示することが重要です。このように、チャンピオンと共に数字をつくり上げていくプロセスこそが、大型案件獲得の鍵となるのです。 (2) Mutual Close Planの作成 SFAのフォーマットにはない、大型商談を成功に導くための強力なツール、その2つ目がMutual Close Plan(商談をクロージングに持って行くプラン)です。 契約締結日を期末や年度末までに確実に守るためには、想定外の事態への備えが不可欠です。大型商談では、秘密保持契約の修正に予想以上の時間を要したり、取締役会承認後の捺印リレー、最終的な社長捺印の手続きなど、様々なハードルが想定外のタイミングで出現します。 Mutual Close Planは、こうした事態を未然に防ぐための、顧客との共同作業と言えるでしょう。契約締結までのスケジュールと必要なアクションを、営業側と顧客側双方でリスト化し、共有・管理することで、スムーズなプロセスを実現します。 顧客との信頼関係構築を可視化するツールとしても、Mutual Close Planは有効です。その作成は、顧客との強固な信頼関係の証と言えます。 Week3の大型商談案件レビューでは、Mutual Close Planを用いることで、企業として取るべきアクションを明確化し、確実な四半期目標達成を目指します。
遠藤 公護