<自民党“敗北の3要件”>与党も野党も政局は混乱、2流国への転落食い止めよ
石破茂新内閣の信任を問う総選挙は予想通り連立与党の惨敗に終わった。派閥裏金問題などの不祥事、首相自身の不人気、党内亀裂という〝敗北の3条件〟すべてにあてはまる惨憺たる結果だった。 今後の焦点は、石破首相の進退、新たな連立協議の行方に移る。 世界的な〝非常時〟に、日本が内政にかまけていれば、世界での存在感はいっそう薄れる。「失われた30年」により、日本はもはや一流国ではなくなりつつあり、その転落を食い止めなければならない。
活発化する連立枠組みの協議
今回の選挙結果について石破首相は「きわめて厳しい審判だ。政策実現に向けて最大限努力していく」と述べ、続投の意向を示した。 首相は選挙前、「政権の信任を得る」と見えを切っていただけに、党内で責任論が噴出する可能性がある。石破退陣となれば、9月の総裁選の決選投票で敗れた高市早苗前経済安保担当相の存在が注目されようが、保守色の強さへのアレルギーは依然強く、〝即戦力〟として、経験豊富、政策通の林芳正官房長官が急浮上する可能性もささやかれている。 連立協議は、議席を大幅に伸ばした国民民主党などを念頭に進むとみられるが、一方で、解散前に比べ50議席上積みした立憲民主党の野田佳彦代表も28日未明の会見で、「自公政権の継続を望まない他党との対話を開始したい」と政権奪還に意欲を見せており、自公か非自公の連立か、をめぐる綱引きが激化しよう。 公明党の石井啓一代表の落選に伴う新執行部との協議も焦点となる。
ご祝儀目当ての早期総選挙を後悔?
落選候補、辛勝した候補は、議席維持に執心のあまり、まぼろしのご祝儀人気を期待して首相に早期解散・総選挙を強要したことを後悔しているはずだ。もっともくやしい思いをしているのは、持論を曲げて党内世論に屈した石破氏自身だろう。信念に従って慎重に解散時期を見極めるべきだったと自らを責めているかもしれない。 与党敗北の原因は、ひとつにかかって、石破首相の度重なる食言、言行不一致に帰せられよう。 首相は9月の自民党総裁選期間中、早期解散に慎重、衆参両院での予算員会を優先させる姿勢を示していたが、いったん就任すると、党内からの期待、圧力に抗しきれず、わずか8日後に断行してしまった。 資金集めパーティー収入めぐる政治資金規正法違反事件に関与した前議員の処遇をめぐる迷走も有権者の眉をひそめさせた。一時は、公認やむなしとの方針を固めながら、きびしい世論に驚き、公示直前になって急遽見送りを決め、比例区との重複立候補も認めなかった。 土壇場での方針転換に対して、対象となった議員らは強く反発、党内の亀裂が広がった。 政策面では、当初の日米地位協定見直し、アジア版NATO構想などについても、それぞれ、「簡単には実現しない」「一政治家としての考えを述べただけ」などと弁明、持論を撤回、後退させていった。 そのせいもあってか、内閣支持率は発足当初から各メディア押しなべて50%前後、20%台もみられる低空飛行だった。 選挙戦大詰めにきて、非公認を含む候補者が代表を努める支部に2000万円の資金を提供したと報じられたことも打撃となった。候補者のなかには、「開いた口が塞がらない」など公然と批判が起き、応援演説に来てもらった〝返礼〟か、街頭演説で「高市早苗さんに総理になってほしい」などとぶち上げる議員も出た。 候補者側によかれと思って大金を支出してかえって恨まれ、就任早々の総理・総裁が東奔西走しているなかで、その〝政敵〟を有権者の前で「次の首相に」と持ち上げる候補を抱える政党が選挙に勝てるはずがない。